ジャニーズ問題でひっかかる点—法で解決できる問題か?-(松沢呉一)
法がないからマスコミは報じなかったのか?
「BBCが報じたジャニー喜多川の性虐待—沈黙のメディアを振り返る」以来、ジャニーズ問題については触れていなかったですが、これはウクライナ・ロシア情勢が緊迫していたのと、この問題について偉そうなことを言う資格はないと自覚していたからです。
あの記事に書いたように、1990年代にも、「週刊文春」が裁判で勝った時にも、ジャニー喜多川のやらかしたことについて私は書いていましたが、この問題の解決に少しも貢献してません。ただただBBCを讃えるのみ。
すっかりこの問題がオーバーグラウンドに出てきた今になって、100年前から言い続けていたように大声で批判し出すほど厚顔ではありません。
でも、気になることがあるので、傍流の話を書いておきます。
カウアン・オカモト氏は「法改正」を求めてます。なんだ、それ。
どんな法律を作ったところで、どんなふうに既存の法律を改正したところで、被疑者死亡ですから、どうにもならんです。
仮に「生きていたら」と考えてみると、ジャニー喜多川は彼に金を渡しているので、児童買春の疑いが濃厚です。児童買春法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)は1999年施行ですから、カウアン・オカモト氏は、法がないから言えなかったのではない。違法行為なのに言えなかったのです。
報じないマスコミを罰する法律を制定するつもりか?
中に出てくる児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律)を改正するという話がどこから出てきたのか不明です。
(児童虐待の定義)
第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
(児童に対する虐待の禁止)
第三条 何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。
18歳未満のジャニーズJr.が合宿所に泊まる場合、ジャニーズ事務所の代表であるジャニー喜多川が保護者ということになりましょうが、それでもこの法では直接に虐待を罰することはできないみたいです。
これを改正して虐待を直接罰することができるようにすれば、金銭のやりとりがなくても処罰できますが、罰則規定がなくとも違法は違法。ジャニーズ事務所のトップがそれをやっていたのであれば十分社会問題になってしかるべきです。
しかし、現にここまで解決されなかったわけです。この上、どっかの法律をちょっといじっただけで急に告発できるようになるはずがない。
カウアン・オカモト氏が今回告発したのも、法が改正されたのではなく、BBCが大々的に報じたからでしょう。
その役割を日本のメディアは果たせませんでした。「週刊文春」や「噂の真相」など一部のメディアを除いて。
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