松沢呉一のビバノン・ライフ

謝った政治家・謝れなかった政治家—謝罪すれば済むことなのに謝罪できずに傷を深めるのはなぜか[中編]-(松沢呉一)

スマホ自転車に追突された時に怒れなかった理由—謝罪すれば済むことなのに謝罪できずに傷を深めるのはなぜか[前編]」の続きです。

 

 

すぐに謝罪した足立区議・謝罪できなかった兵庫県議と東京都議

 

vivanon_sentence「間違えたらすぐに謝ろう」って、小学校の標語みたいなレベルの話をしているわけですけど、頭ではわかっていても、なかなかできないものです。

ちょっと前に偽のブランド・バックを販売して罰金刑になった和田愛子って足立区議がいたじゃないですか。

「女の政治家が増えれば社会がよくなる」どころか「女が政治をやれば戦争がなくなる」なんて呆れたことを言う人たちがいるわけですが、「女の政治家が増えれば犯罪者が増える」かもね。

犯罪者や無能な人間を増やすことによって「数字的平等」を達成しても意味がないだけでなく有害です。政治家に向く資質のある人材を増やさなければどうにもならず、そのためには時間がかかっても教育から変えるしかないと私は主張し続けていることの裏付けにもなろう事例かもしれない。

でも、あの人は、さほど深堀りされることなく、すでに記憶が薄れている人が多いでしょう。

すぐさま謝罪をして、辞職を表明したからです。

 

 

偽のブランド・バッグを売ったのは、20年前の学生の時のことなのではなく、つい最近です。地方議員も条例などの法の作成に携わる以上、法は遵守しなければならず、ただの会社員なら懲戒にならずに見逃されることがあったとしても、政治を目指す人がこれをやって当選したのですから、議員辞職するしかないでしょう。

すでに犯罪は確定していて、そうするしかないということでもあるのですが、そうするしかない状況でも号泣会見して自分を正当化しようとして今なお笑いものになっている兵庫県議がいましたし、交通違反を繰り返しながら、辞職しようとしなかった都議もいましたよね。

やったことはどれも変わらないとしても、あの人たちと比較して、和田愛子さんは潔くて、これから数年かけてやり直し、改めて立候補すれば、私も応援しないではない。

 

 

岸田翔太郎の件

 

vivanon_sentence最近だと、岸田首相の長男・翔太郎の件でも、謝罪して辞職してボーナス・退職金返納で、私は余すところなく許しました。

 

 

公邸は首相とその家族が私的空間として占有している場所ですから、シャブを打つなど違法なことをしたり、乱交パーティなど公序良俗に反することをしたわけでもない以上、無許可で公的スペースでの写真撮影をしたことがあまり好ましくはないと言える程度。謝罪すれば済むこととしか思えないです。反省すべきは、そのことよりも、「写真を撮るな」「撮ったら表に出すな」というルールを参加者に徹底できなかった点につき、危機意識が薄弱ということでしょう。

ただ、公私混同の「前科」があるので、辞職ですべてチャラってことで。公用車の私的利用は批判されてしかるべきですが、金子恵美・元議員が公用車を私的利用したことをこの国の多くの人は容認してしまったので、岸田翔太郎も許したれよ。私はどっちもアウトだと思いますが、辞職したので、岸田翔太郎の方がまし。

なお、中華料理屋の予約をバックレたとされる板橋区議については真相がわからないのでパスします。

 

 

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