松沢呉一のビバノン・ライフ

仁藤夢乃が理想とする社会をシミュレーションする—ドキュメンタリー映画で語った日本の風俗産業[補足編2]-(松沢呉一)

北欧を手本にしたがる人たちはポルノ解禁を求めるのが筋—ドキュメンタリー映画で語った日本の風俗産業[補足編1]」の続きです。このシリーズはこれで終わり。

 

 

聞かれなかった質問

 

vivanon_sentenceドキュメンタリーの監督からの質問は10問くらい用意されていて、「そんなん答えようがない」というものもあったのですが、答えられない理由を述べただけだったので、どんな質問だったか忘れました。

準備していた質問以外に、通訳から、遊廓についての質問があったのですが、「一般に流布している遊廓についての本は全部と言っていいくらい不正確です」と説明しました。江戸の遊廓は詳しくないのでわからないですが、近代のものについては「ビバノン」でも多数指摘してきた通り。

当初は全然乗り気ではなかったのに、ひさびさに性風俗について語ったために勢いづいてしまって、質問になかったために説明しなかったことで、「これも話しておきたかった」と思ったことがあります。ドキュメンタリーとしては現状の日本をとらえたものなので、その視点は必要がなかったのでしょうけど、たとえば「変化は起きているのか否か」あるいは「これからどうなるか」。

風俗産業をなくしたいのなら、日本の労働時間の長さと都市部の人口集中を解消し、母性神話から抜け出し、夫婦間でルールから逸脱することを許しあえるような関係を作れるようにすべきです。でも、無理でしょ。

日本のルールもそう簡単には変化しない。

誤解されないように念押ししておきますが、私は、周りを気にする日本人の行動原理や、意味のないルールに縛られる日本人の特性とは馴染まないところがあるとしても、そんな日本は私にとっても居心地がいい。他者に迷惑をかけない限り、周りを気にせず、自分の考えを貫くことは容易であり、ルールを破ったところでとやかく言われることはない。同調圧力が強いと言っても、これは自分自身で作り出している圧力であって、気にしなければそれまで。

新型コロナのピーク時でも、私は私の考えを実践することができていました。しかし、もし中国のように、マスクを着用することが法で定められ、マスクをせずに外を歩くだけで捕まる国ではそうはいかない。今に至るまでワクチンも接種していないですが、これも強制されない日本はいい国です。

だから、安易な法制化や法改正には警戒しますし、現行法さえまるで理解できていないのに(おそらく文言をひとつひとつ検討しながら読んだこともない)、法律を自分に都合よくなることだけを考えて改正を主張する仁藤夢乃は強い憤りを感じます。さらに。あんなんを支持する共産党、メディア、ジャーナリストに対しても同様。

※TOHOシネマズ脇。料金を書いたボードを手にした女の子らが両サイドに多数立ってますが、ガールズバーやコンカフェの客引きです。店の敷地内じゃないと自分から声をかけてはいけないので立っているだけ。仁藤夢乃にかかれば、これらは売春をする子らで、声をかけているのは買春客ということになりましょう。いかに言葉の定義が恣意的で、いかに現実を歪めているのかよくわかりましょう。

 

 

仁藤夢乃が望む社会

 

vivanon_sentence仁藤夢乃やその低劣な支持者たちのように、「なぜ日本の風俗産業は必要とされているのか」といったことを考えることもなく、法を理解することもなく風俗産業を否定する人たちや理不尽な規制をしたがる人たちが力を持つと、客にとっても店にとっても働く者にとっても悪い方向での変化を強いられます。

たとえば売防法を知らず、現実を知らない仁藤夢乃が言うように、韓国のような売買春の両罰規定を導入すると何が起きるか。

風俗産業は地下に潜って暴力団支配が進み、業態自体が違法になると、それ以外でも違法なことをすることに抵抗がなくなり、18歳未満とわかっていて雇い入れる店が増えます。

性犯罪も増加するのは必須です。

健全な店であれば、客が財布を抜かれるなんてことはなく、もしそんなことがあったら確実にクビになりますし、警察に行けば捜査するでしょうが、客が逮捕されるとなればおいそれと警察には行けない。

女にも男にも悪人はいて、より効率よく稼ぐために、男と組んで、美人局をやるのもいるでしょうね。これなら何十万も手に入れられます。今だって恥ずかしくて警察に行かず、泣き寝入りするのが多いでしょうが、いよいよ警察に行けない。

 

 

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