松沢呉一のビバノン・ライフ

韓国は先進国から100年遅れてベルヌ条約に加盟—文化盗用とパクリ[10]-(松沢呉一)

「法に触れなければパクっていい」という考え方にどう対抗するか—文化盗用とパクリ[9]」の続きです。

 

 

「よその国もやってきた」論はパクリの克服に水を差す

 

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この調子でJINさんが挙げている例を全部調べると、時間がかかって寝る暇がなくなりますので、あとはどなたかに譲るとして、ここまでをまとめておきます。

「韓国は日本のお菓子をパクった。しかし、日本もアメリカからパクった。そのアメリカもヨーロッパからパクった」というのがJINさんの主張ですが、プレッツェルの例を見ても、魚型のお菓子にしても、「きのこの山」にしても、「米国も日本も他社の先行商品とライセンス契約を結ぶか、アレンジを加えてオリジナル商品として出してきたのに対して、韓国のいくつかの企業はそのままパクっている」とするのが適切です。

日本でも、韓国式にただパクる企業は存在するわけですが、韓国ほどは多くないと思いますし、おおむね1960年代までに集中し、今現在は「りくろーおじさんの店」のチーズケーキをパクったコイサンズ社の話題がああも大きく報じられたように、それをよしとしない空気が強まっています。

あとの企業は、よそ様のものをそのまま自分のものかのように出すのは恥ずかしいので、「権利をクリアする」。それができなければ「元ネタを明記する」。元ネタに対する敬意であり、オリジナルとの誤解を避ける方法です。もっとも多いのは「同じにならないように、アレンジを加える」でしょう。「パクリ」との非難をさけ、訴えられた時に逃げられるようにするわけです。

しかし、韓国はただパクっている例が多すぎましょう。

✳︎2015.年8月28日付「アジアトゥデイ」 江崎グリコがロッテに勝訴した判決を受けて、ポッキーに限らず日本製品をコピーしてきたロッテに、裁判所がストップをかけたという記事。詳しくは省きますが、森永の「エンゼルパイ」を韓国オリオンが正規に発売し、ロッテがこれをパクった「チョコパイ」を出し、オリオンはロッテに訴訟を提起しますが、敗訴してます。また、韓国クラウン製菓も商標権侵害でロッテに訴訟を起こして勝訴しており、韓国国内でもパクリまくっているロッテに対する批判は以前から高まっていたようです。

 

 

なぜ韓国のお菓子メーカーはただただパクリ続けるのか

 

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韓国のオリオン森永と業務提携した例があるにしても、ロッテのように、今に至るまでパクリ続けている企業が大手を振っています。

「かつて日本は韓国から何もかも盗んでいった」というファンタジーに基づいて、「日本からは何を盗んでもいい」といった信念を実現している会社もあるかもしれないですが、ロッテが国内の商品をパクっていることや、英国のキットカットをパクった会社があることから、「金になればどこからでもパクっていい」という信念によるものかと思います(そのどちらもか)。

韓国企業はただパクるのをやめるべきです。そういう意見をもつ韓国人は少なくないし、そのような記事を出しているメディアもあります。私の仲間。

「よその国もやってきた」論は、そのような姿勢に水を差します。JINさんのチャンネルを私は推薦しますが、この回はいただけない。

例えば、韓国のパクリ音楽に対して、韓国人が「いやいや、日本も英米の音楽をパクってきた」として、オレンジ・レンジを持ち出すのが正しいか? だからオレンジ・レンジはムチャクチャ叩かれて、改めて著作権使用料を払い、クレジットをし直すしかなくなり、表舞台から消えた今もパクリの代名詞として記憶されています。

そこを飛ばして、パクったことだけを肯定的にとらえるのはズルですし、オレンジ・レンジを例に出すなら、韓国もオレンジ・レンジを手本に著作権使用料を払い、クレジットをし直すべきです。

あるいは「韓国は詐欺犯罪が多い」という指摘に対して、「詐欺はどんな国にもある」と返すのは論点ずらしです。国際的にみても、韓国に詐欺犯罪が異様に多いのは事実なのですから、その原因を解明して解消すべきであり、「詐欺はどんな国にもある」という逃げは、今後も詐欺国家であり続けることの宣言に他なりません。

不思議ですよね。なぜ韓国の企業は何の工夫もせずにただパクるのか。それが韓国の文化であるなら、大事に守っていけばよろしいですが、国外のものをパクるのは関心しません。著作物において、それをしてはならないことを定めたのがベルヌ条約です。

✳︎韓国クラウン社が出している「キッカー」。本家が韓国で韓国で正規発売される前に発売されていたよう。この図版は、NYの広告代理店Kickerのfacebookより、2012年の投稿。「韓国製キットカットの模造品( knockoff)」と紹介されています。キットカットと間違えて買い、味も食感も本家に及ばないと書いている人もいて、不正競争防止法に引っかかりそう。クレームがついたのか、現在はデザインを変更して、パクリらしさを薄めていますが、ロゴは同じです。厚顔。

 

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