松沢呉一のビバノン・ライフ

先進国になった韓国のパクリはもう見逃されない—文化盗用とパクリ[11]-(松沢呉一)

韓国は先進国から100年遅れてベルヌ条約に加盟—文化盗用とパクリ[10]」の続きです。

 

 

韓国がベルヌ条約に加盟していなかった理由

 

vivanon_sentence

韓国では、著作権法は1957年に制定されているのに、1996年までベルヌ条約に加盟しようとしなかった理由を探ったのですが、納得できる理由は見つかりませんでした。

一般論として、自分の国の著作物が国外で金を生むことはめったにないので、発展途上国にとっては、国外の著作物がタダで使えた方がいい。必然的に、そういう国の国民は、他国からパクることに罪悪感が生じにくい。ミャンマーのミュージシャンが「Bling-Bang-Bang-Born」をあそこまでコピーしてもいいと思えたようにです。

1990年代になるまで、韓国の著作物が国外で利用されることはほとんどありませんでしたから、アバウトにしておいた方が得という計算からベルヌ条約加盟を遅らせたのでしょうが、1995年の世界貿易機関の発足時から韓国は加盟していたため、自動的にベルヌ条約の拘束は受けることになっていましたし、この頃から、ドラマを筆頭に韓国製ソフトが国外でも売れるようになってきます。

これ以降、「冬のソナタ」を筆頭とした韓流ドラマ、少し遅れてK-POPを国策として売り出していくので、それを成功させるためには、国産著作物の保護をしなければならなかったわけです。金が得られそうになってきて、慌てて加盟したようにも見えます。

「なんちゅう身勝手な」ということですが、発展途上の国はそんなもんです。

✳︎アサヒ飲料「十六茶」(1995)のパクリとされる韓国・南陽乳業の「17茶」(2005)。パクリと言われる韓国の商品は数々あれど、これは私の許容範囲。複数のお茶をブレンドするのは珍しくないながら、16種も入っているところに「十六茶」の特性があり、「十六茶」は十六夜にも通じる落ち着きの良さがあります。それをぶち壊して17にしたところに「少しはアレンジしよう」という意志を感じます。また、使用している材料も大幅に違うところにもアレンジがあります。この容器で間違って買う人もいないでしょう。発売されたのが2000年代に入っていたため、遠慮という意識が遂に芽生えたか。韓国企業も頑張ればこのくらいはできる。

 

 

不二家のペコちゃんとポコちゃんのパクリ

 

vivanon_sentence1990年代まで、韓国は知財に対する認識が薄い国だったことは間違いなく、この時代の表現物を調べると、著作物の無断使用やパクリが大量に出てくるはずです(すでに多数指摘されてます)。

他の国からもパクってますが、とくに韓国人が好んで日本の製品をパクリ続けたのは、問題になりにくかったからです。1998年に文化開放措置が始まるまで、日本文化の移入を禁じてましたから、オリジナルを知らない国民にはバレにくく、パクった韓国作品をオリジナルだと思わせることが可能でした。

本も戦後20年から30年くらい雑誌、漫画、映画、テレビではパクリが横行していたのは事実です。不二家のペコちゃんとポコちゃんが米国のパクリだと知った時、私は強いショックを受けました。ペコちゃんは1958年に登場ですから、敗戦から13年。

これは著作権侵害ですが、それを著作者が訴えなかったのは極東の島国のことなど知る由もなかったのか、気づいていたとしても、戦争でボロボロになった国ですし、「あの国は相手にするような存在ではない」と軽視していたからでしょう。

食品は輸入禁止の対象ではありませんでしたが、当時は今以上に韓国の司法は自国利益優先が強かったはずです。仮に損害賠償が認められても、当時、日韓の加工食品が行き来することが少なかったので、わずかな損害しか認められない。これでは訴えても報われない。

それ以前に、韓国でパクられても日本のメーカーは気にしていなかったろうと思います。バッティングしないですから、日本人がミャンマーのミュージシャンのパクリを笑って済ませるようなものです。また、1990年代まで、日本人の多くは韓国に関心がなく、存在を意識することもほとんどありませんでした。

✳︎不二家のサイトより。時間経過とともに変化して。オリジナルのまんまではなくなっており、今さら批判する気はないですが、今から30年ほど前にパクリと知った時は、馴染み深かったでけに、嫌な気分になりました。「見逃されているからパクってやれ」という姿勢は、のちにしっぺ返しがきます。今からでも遅くないので、元ネタの著作者なり遺族なりを探し出して、これまでの使用料として100万ドルくらい支払ってはどうか。企業イメージが爆上がりになりますから、宣伝費として考えれば100万ドルは安いもん。

 

next_vivanon

(残り 933文字/全文: 2890文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ