なぜゲーム産業は「歪んだポリコレ思想」に染まるのか—UBIソフトから学ぶ-(松沢呉一)
「「ニューヨーク・タイムス」のデマ報道とハシモト・カズマという虚言者—UBIソフトとともに凋落する旧来メディア」の続きです。
金がかかりすぎるゲーム開発
UBIソフトもテンセントによる買収の話が進んでいることを認め、これでさらに株価が上がると思ったら、本日はまた急落。労組の上部団体がストライキを呼びかけ、株主の突き上げも激しくなっていますから、このまま下がりそうですが、下がったところで買うのがチャンス。知らんけど。
当然でありますが、キャメロン・リー副社長だけでなく、重要なポジションに就いていたスタッフの退社が相次いでいるようです。UBIソフト社内にも、テンセントによる買収について前から知っている人たちもいたわけですが、それが現実になりそうだとなると心穏やかではいられないでしょう。
UBIソフトは全世界で1万9千人を雇用する大企業です(数字はいろいろで、最大2万人)。テンセントが買収すると、その3割から4割が解雇されると言われています。ポリコレ一派は一層され、それ以外の社員も安閑としていられず、ここ数日で就職先を探し始めたのも多いと想像できます。
人材が必要なゲーム会社は、UBIソフトのスタッフをハンティングするとなんぼでも引っ張れそうですぜ。しかし、有能なスタッフはとっくに抜けたとされていますし、能力があっても「歪んだポリコレ思想」がついてくるので、使いづらそうです。
UBIソフトに限らず、どうしてこうも、ゲーム業界や映画業界に歪んだポリコレ思想が蔓延したのでありましょうか。私もUBIソフトを通してわかってきたのですが、市場が巨大化した結果です。
「アサシン クリード シャドウズ」の発売を延期して、3ヶ月の修正作業をするだけで200万ユーロかかるそうです。約3億3千万円。ゲームのことをよく知らない私でも、ガードレールや軽トラ、トラロープを消し、畳を長方形にし、鳥居を適切な場所に配置し、中国化された日本を改定するなど、軽い手直しの人件費でそのくらいかかることは容易に想像できて、弥助を引っ込めることなど、その金額では無理と簡単に判断できます。
ゼロからゲームを開発しようとすれば、この数十倍でも足りない。数年間に渡り、多数の人員がそれに専念するのですから。
となると自社資金だけでは回せず、銀行からの融資を受け、投資家からの金を当てにするしかない。銀行から借りた金は返済しなければならないので、リスクを分散するためには、投資が望ましい。ヒットすると儲けが大きいので、投資家にとってはおいしい投資先ですが、コケると大損。
✴︎Wikipediaより、仏モントルイユ(Montreuil)にあるUBI本社
ESG指数を上げることで金を得る仕組み
そこで、投資家たちがリスク回避のために参照するのがESG指数です。ESGはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の略で、英国のFTSEインターナショナルや米国のMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)などが独自の基準で、各企業について数値化して公開しており、投資家にとってはポイントが高い方が、環境に配慮し、社会貢献し、危機管理ができているということで安心感につながります。
この指数評価ではDEI(Diversity/Equity/Inclusion)が重視され、ポイントを上げて金集めをしたい企業は、差別を撤廃し、多様性、公正性、包括性を実施します。
例えば採用や雇用条件において、人種差別撤廃条約に定められた差別を排排することに反対する人はほとんどいないでしょう。その結果、さまざまな肌の色、人種、出自を持つ社員が平等に働ける企業のありように反対する人もあまりいない。
そこで留まれば問題はないのに、そこを逸脱する企業があり、UBIソフトがその筆頭です。
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