著作権侵害に怒りながらパクリ作品を生み出し続けるウェブトゥーン企業に未来はあるか?—韓国のポップスに浸ってみた(16)-(松沢呉一)
「「韓国を見習って日本も文化予算を増やせ」なんて言っている人を信用してはならない—韓国のポップスに浸ってみた(15)」の続きです。
カカオ ウェブトゥーンが台湾とインドネシアから撤退決定
数日前に、業界第2位のカカオ ウェブトゥーン(カカオピッコマ)がヨーロッパに続いて台湾とインドネシアから撤退と韓国メディアが報じていました。
この記事によると、インドネシアでは違法にコピーして公開するサイトが障害になったようですが、違法サイトにアクセスするのはウェブトゥーンでは金を出さなければ読めない日本の漫画に誘引力があるためでしょう、おそらく。韓国の漫画は無料が多いので、これとは関係なし。
それでも不正サイトはウェブトゥーンの売り上げを落とすわけですが、不正サイトは米国でも韓国内でも問題になっています。インドネシアから撤退するのは、不正サイトがあろうとなかろうと不調だったためではなかろうか。台湾についてはそんなことは書かれておらず、でも、こちらも撤退ですし。
カカオ ウェブトゥーンは今後は日本と米国に注力するとのことです。日本を抜くと韓国メディアが大言壮語していたのに、自立できない韓国依存文化の典型です。
✴︎2024年10月21日付「毎日経済」
ネイバーウェブトゥーンが違法サイトを提訴
これに続いて、業界1位のネイバーウェブトゥーンが、国内の違法サイト運営者3名を訴え、損害賠償10億ウォンを要求したとの報道も出てました。日本円で1億1千万円。実際の損害は「年間最低2億ドル」とのことですが、これは今回、訴訟を起こした3名だけでなく、違法サイト全体の損害です。
何にせよ、違法コピーは許されるべきでなく、どんどん訴えればいい。
キム・ギュナム/ネイバーウェブトゥーン副社長は「ネイバーウェブトゥーンは違法コンテンツ流通に対して徹底した不寛容原則をもとに厳重に対応して創作者保護に最善を尽くす」と言った。
これ自体は支持しますが、多数の盗用を生み出し、たった今も盗用の検証が進んでいる作品が複数あるネイバーウェブトゥーンは徹底した不寛容原則をもとに厳重に盗用に対応してはどうかと言わないではいられません。対策をしてないわけではないし、盗用と見られるものは連載を打ち切り、手直しが可能なものは手直しをして出し直すことをやってますが、それでは追っつかず、「以前よりひどくなっている」「作品の質もどんどん落ちている」との声が出ています。
これは構造的な問題です。ウェブトゥーンは、多数の漫画を無料で読めるようにすることでPVを増やし、ハッタリの数字で集客するわけですが、蓄積がないのに多数の作品を確保すれば質が落ちるのは当然。質が落ちれば読む人は減る。数字を維持するためにまた作品数を増やす。
描き手を確保するために、中高生の漫画家が増えているらしいですよ。これでまた質が落ち、パクリが増え、読む人が減る。見事な悪循環です。
中高生の中には、厳しい受験競争から逃れるために、漫画に逃避するのもいるでしょう。売れないと飯が食えないし、漫画で描きたいことがあるわけでもないので、すでに売れている漫画をパクる。それが発覚して、漫画家への道が絶たれる。その時には受験競争からも落ちこぼれている。K-POPアイドルの練習生になって、デビューできなかった若者と同じです。
大人なら、「自分の選択」で済ませていいと思いますが、著作権の知識を十分に身につける機会を与えないまま、学生を企業の金儲けのための捨て駒にするのはどうなんですかね。どうでもいいか。
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