松沢呉一のビバノン・ライフ

ミロ・モアレをパクった韓国人アインによる「鴎鴎亭ボックス女」—フォロワーを増やしたい目立ちたがり屋の失敗[前編]-(松沢呉一)-

 

「鴎鴎亭ボックス女」登場

 

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取り上げようと思いつつ、そのままになってしまったのですが、先ごろ、裁判で求刑されたことが報じられていたので、改めて取り上げておきます。

昨年の10月13日、韓国ソウル市江南の狎鴎亭ロデオ通りで、箱だけを体につけた女が現れ、通行人に手を入れさせ、胸を触らせるパフォーマンスを展開し、「鴎鴎亭ボックス女」として大いに話題になりました。

 

 

インターネットでは「だから、ソウルに住まなければならないのだ」「釜山にも来てくれないと訴える」など、面白がる反応が多く書き込まれました。韓国では、国民の5人に1人がソウルに居住。極端な一極集中が進んだことで、さまざまな弊害を生み出しており、それを踏まえたコメントです。

対して、フェミニストたちが多く集まる掲示板では圧倒的に反発しているとのことです。日本と同じで、性の商品化云々というものです。

前から指摘しているように、韓国では何かにつけ対立構造が生じてしまって、社会を停滞させていることもまた問題化しています。「自分は悪くない、他人が悪い、社会が悪い」という他責思考が強い韓国の必然です。そのひとつが男女対立であり、これが恋愛や結婚を遠ざけ、少子化を進めているという見方もあるくらいです。

韓国社会がここにも集約されています。

 

 

韓国ですから、ここでもパクリ

 

vivanon_sentence「いい/悪い」「面白い/つまらない」を論ずるより先に、私は「ミロ・モアレのパクリじゃねえか」とまず思いました。ミロ・モアレについては、かつてたっぷり論じましたが、「猥褻とは何か」を考えるのに格好の素材ですので、読んでない方は是非。

ミロ・モアレの「裸に箱」パフォーマンスは、デュッセルドルフ、ロンドン、アムステルダムで実施されたものです。上の韓国の報道でも、「ドイツ、日本など外国で流行していたものを真似したものだ」との指摘がなされたと言っていて、ドイツは、ミロ・モアレのことを指してましょう。

これ自体、誰かがその前にやった例があるかもしれないですが、アート文脈でこんなことをしたのはいないでしょう。

日本で流行したことを私は知らないですが、AVの企画でやった例があるかもしれない。それだと、ミロ・モアレのパクリでもいちいち文句を言う気がしません。韓国の例も同様で、エロ文脈やお笑い文脈であればパクリもありかと思ってしまいます。別の文脈に移動させることで意味合いが変化するわけです。

韓国でこれをやったのはハンドルネームアイン」(A_in)という20代の女性。この名前と同じファッションブランドが韓国にあって(「A_in」または「ain」)、そこから名前をつけたと思われます。彼女自身が運営しているブランドかとも思ったのですが、どう考えても違っていて、ブランド名をそのまま使うと、自分が売れた時にTシャツを販売するだけで商標違反で訴えられかねないわけで、思慮がなさすぎようかと(ただ、Instagramの投稿は10年前で止まっているので、潰れたのかも)。

アインはエロ系モデルをやっているようなので、これもその延長だと思ったのですが、2023年10月14日付「日曜日新聞」で、彼女は事務所であるプレイジョーカーの代表とともにインタビューを受けており、両者とも芸術であると言ってます。だったら同じ文脈のパクリです。

 

 

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