日本人がトイレで石鹸を使う率が低いのは公衆トイレの数が多いため—新人「炎上商人」登場![中編]-(松沢呉一)
「公衆トイレで石鹸を使うのは不潔と感じる人々の存在を想像もできない鈍感さ—新人「炎上商人」登場![前編]」の続きです。
ボスニア・ヘルツェゴビナの公衆トイレ事情
前回見たように、少なからぬ日本人は外出先のトイレに設置された石鹸を使うことを避け、人によっては持参のウェットティッシュを使います。また、私も一時そうしていたように、アルコールのボトルを持ち歩いている人もいます。それに気づけるほどの観察眼のないFKA MORENAさんの知らない日本です。あるいはそれを知りながら「日本人は不潔」として、銭儲けを目論む炎上商人のFKA MORENAさんです。
では、さらに石鹸利用率を決定する要因を見ていきましょう。
以下はヨーロッパでの調査です。。
2015年のギャラップ社による調査です。
もっとも高いボスニア・ヘルツェゴビナ人の96パーセントに対して、もっとも低いのはオランダの人の50パーセントです。
ボスニア・ヘルツェゴビナではなぜそれほどの高率になるかを調べたら、簡単な理由でした。公式のデータは見つからなかったのですが、公衆トイレがほとんど存在しないようです。
観光地であるゼニツァでは観光客を狙う窃盗などの問題とともにインフラ整備の遅れを早急に解決しなければならないとしています。週末は公衆トイレがひとつもないため、トイレに行きたい観光客がいると、食べたくもないのに飲食店に案内するしかないのだと。週末に限定されているのは公的施設が休みになってトイレが使えないためでしょう。
この記述からすると、パチンコ屋がないのは当然として、マーケットにも民間設置のトイレはないのだろうと思われます。あるいはこれらも週末は休みになるのか。
このように、「石鹸で洗うかどうか」は公衆トイレ事情に大きく左右されることは容易に想像できます。仮に日本で石鹸が設置されていない公衆トイレをすべて廃止すれば、「家でどうしているか」「職場でどうしているか」「飲食店でどうしているか」を答えることになり、ボスニア・ヘルツェゴビナ並みに上がるかもね。
石鹸の使用率は、インフラが整っているかどうかに大きく左右されるのであり、石鹸だけに着目するのは頭が空っぽすぎますが、炎上商人としては格好のネタってわけです。
✴︎2024年8月31日付「ZENICA」 ゼニツァの地元メディア。中国などアジアからの観光客も多いのですが、観光公害ではなく、受け入れ態勢ができていないことの方が問題になっているようです。
公衆トイレの数と石鹸設置の関係
他の要因もありましょうが、公衆トイレの数と石鹸の使用とは密接な関係があることは間違いない。
トイレの清掃員にとって石鹸の補充があるのとないのでは作業量に大きな違いがあります。検索してみたら、大量に清掃員の募集が見つかりますが、どこも要免許にはなっておらず、公園のトイレを三輪自転車で回ると説明されていたりします。
トイレットペーパーもかさばりますが、軽いのでまだいい。対して液体洗剤は重い。何キロもある大きな容器を自転車で運ぶのは大変ですよ。小さな容器に入れると何度も往復しなければならず、車で移動すると採用条件のハードルが上がり、時給も上げなければならないし、道路から離れた場所にもトイレはありますので、台車を使わなければなりません。
以上のことから、なぜ米国に比して日本では石鹸を使わないのかの答えはそんなに難しくありません。米国は公衆トイレが少ないのです。確認してみましょう。
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