「ダンダダン」は段田男から? 「肉汁餃子のダンダダン」から?—「差別」を利用する人々[1]-(松沢呉一)
「ダンダダン」への疑問
もう治ったと思ったのに、風邪がぶり返してしまいました。また熱っぽくて、鼻水とくしゃみが出ていて、時折腹痛もあって、きれいに振り出しに戻りました。
バイト中は膝までの短パンを履いていて、ひどく濡れない限り、着替えるのが面倒でそのまま帰ることが多いのですが、冬でも脚を出している若い男は案外多いものです。脚を出している若い女はもっと多いですし。だからと言って、若い男でも若い女でもない私が短パンであることを肯定するものではなく、風邪をひいたため、短パンで帰るのはやめました。ぶり返したので、その甲斐がなかったぜ。サンダルもやめた方がいいかもしれない。
あれやこれや話している時に、脈絡なく急に思い出して、私はこう聞きました。
「『ダンダダン』が人気じゃないか」
「そうみたいですね」
「あれって、演歌歌手の段田男からとったのかな」
「ああ、そういう人がいましたね」
「もし今も歌手をやっているんだったら、聖地巡りとして、段田男のコンサートに世界中から人が集まっているのかな」
「来るとしてもちょっとだけでしょ」
マンガやアニメに段田男が出てくるわけじゃないですからね。
「それより、飲み屋のダンダダンじゃないですか」と福田君。
そんな名前の飲み屋があったようななかったような。
✴︎「ダンダダン 1-17巻 全巻セット」 16,880円
「肉汁餃子のダンダダン」の謎
それから2時間ほど後のこと。私は「肉汁餃子のダンダダン」の前にいました。西新宿を歩いている時にたまたま通りかかっただけです。ダンダダンだけに、オカルト的な偶然を感じないではない。
この店がここにあることはなんとなく認識してましたが、店名がわかりにくい。
Googleストリートビューより
上の看板に「ダンダダン酒場」と小さく書かれてます。その上には「肉汁餃子製作所」と大きく書かれ、暖簾の上の看板には「大衆餃子酒場」とあります。どれが店名だよ。正式な屋号は「肉汁餃子のダンダダン」ですから、どれでもありません。
近所の人しか来ない個人経営の店なら、屋号を記憶してもらわなくても支障はないでしょうが、全国に100軒以上あるチェーン店で、こうも屋号をわかりにくくしている例は他にないでしょう。不思議です。この店で餃子を食うと餃子型UFOを目撃できそうです。
漫画・アニメの「ダンダダン」には昭和のアイコンがふんだんに出てくるので、段田男が元ネタかと思いつつ、これまで検索するには至らなかったのですが、この日はこの会話と「肉汁餃子のダンダダン」の前を通りかかったことがきっかけで、段田男が今も歌手をしているのかどうか調べてみたら、意外なことが判明。
プロ歌手をやっていたのはたったの2年、出したレコードはシングル2枚だけだったのです。そんな短命だったのか!
精神を病んで愛知県の実家に帰って、父親の手伝いをやったあと、現在は歌謡教室をやっているんだそうです。歌っていた曲は覚えていないし、顔もはっきりとは覚えていないのに、名前は忘れていない。段田男という名前はそのくらい強烈でした。
✴︎2016年10月17日付「日刊ゲンダイ Digital」
(残り 800文字/全文: 2175文字)
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