これまで国外進出に失敗し続けた日本のポップス—シティポップがああも人気を集めている理由がわからない[前編]-(松沢呉一)
「NewJeansハニvs.キム・ジュヨンADOR代表の国会バトルと「K-POPには韓国語以外にオリジナリティがない」との声—韓国のポップスに浸ってみた(14)」の続きのような内容です。
昨日これを観て、大いに納得しました。
「勉強すればするほど、より自由になる」って言葉は素晴らしいっすね。この結論に至るまでの音楽理論の話は大変説得力があって、これは他の多くのジャンルにも通用する真理かと思います。勉強しなくても素晴らしいものを作り出す天才もいますけどね。
以前も書いたように、私はシティポップを面白いと思ったことがほとんどありません。よって、どうして近年ああも国外での人気が高まったのかもよくわかりません。
10月にそのわからなさを書いたのですが、イマイチ詰めきれていないので、ペンディングにしてました。その中で、なぜシティポップが受けているのかを推測をし、ぼんやりとした感触でしかないながら、日本語に鍵があるのではないかとの説を提示していたのですが、ドクター・キャピタルがその説を裏づけるようなことを話してくれています。日本語の特性である音節の多さが譜割りに影響しているのではないかというのが私の感触だったのですが、そっかリズムか。
私の原稿内に名前を軽く出していたことでもあるので(後編)、私の疑問がドクター・キャピタルによって解明されて嬉しい。
また、かつては英米のポップスにも見られたコード進行が廃れ、日本では維持されたとの説も納得しやすい。シティポップの感想としてしばしば「聴いたことがないのに懐かしい」と言われているのはもっともか。
竹内まりやの曲を取り上げていますが、ここで論じられているのは広くJ-POPに見られる傾向であり、ガラパゴス文化は強いぜ。
この動画を観て、「詰めきれていなかっただけで、方向としては間違っていなかったかもしれないな」と思い直し、正月スペシャルとして出すことにしました。10月に書いたものです。
これまで失敗してきた日本のミュージシャンの海外進出
「NewJeansハニvs.キム・ジュヨンADOR代表の国会バトルと「K-POPには韓国語以外にオリジナリティがない」との声—韓国のポップスに浸ってみた(14)」で、米国のK-POPファンによる「K-POPはオリジナリティがない」という評を取り上げました。
日本もさんざん「オリジナリティがない」「日本らしさがない」「英米の物真似」と言われ続けましたので、そこは他人事とは思えません。それをなかったことにして、韓国を嘲るのはフェアではないので、このことを確認しておきます。
国外進出、とくに英米進出を試みた日本のミュージシャンは数々います。古くはピンクレディーとか、比較的最近ではドリカムとか宇多田ヒカルとか。宇多田ヒカルは最近になって火がついて、YouTubeで「first love」が1億再生回数を達成して「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」に追いつきましたが、海外進出の計画を成功させたわけではありません。
YMOは一定のファンと評価を得たとは言え、それほど売れたわけではなく、国外ツアーは赤字だったと当時聞きました。 機材で金がかかったという話だったかもしれないですが、その経費に見合う広い会場を埋められるほどの人気はなかったのでしょう。
少年ナイフの安定の人気
ジャズだとまた別ですが、ロック部門で言えば、LOUDNESSがボチボチ活躍したのが最高の成功例でしょうか。
メタル系やパンク系では他にもFLATBACKERなど、国外で活動したバンドは決して少なくありません。中では、少年ナイフが幾度も全米ツアーを実施し、ニルヴァーナとともに全英ツアーをやり、少年ナイフの曲をカバーした2枚組トリビュートアルバムが出たのは特筆すべきでしょう。
少年ナイフは自ら打って出ようとしたのでなく、国のサポートがあったわけでもなく、あっちのレーベルから声がかかり、カート・コバーンやソニック・ユースのサーストン・ムーアら、少年ナイフのファンであるミュージシャンが引っ張ってくれたものです。成功だの失敗だのという枠組みとは無関係。
Wikipediaを見てて初めて知ったのですが、少年ナイフによるカーペンターズ「TOP OF THE WORLD」のカバーがマイクロソフトの全世界向けのCMに起用されたことがあったんですね。このカバー自体知らんかった。
そういうこともありつつ、あくまでインディーズ・レベルでの活躍ですが、今もマイペースで活動を続けているんですから、理想的です。
少年ナイフのライブ映像はないかと探したら、いっぱいありました。
2009年とあるので、何度目かの全米ツアーです。スペインのバルセロナやパレスチナのベツレヘムのフェスでのライブ映像などもあります。
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