日本人にとっての「お茶とお菓子」と中国人にとっての「お茶とお菓子」—日中文化比較-(松沢呉一)
「「日本は甘い」と語る中国人—中国に火事場泥棒がいない理由(絶無ではないながら、少ないのは事実っぽい)」の続きです。
北京の羊羹
火事場泥棒の話とは全然つながらないのですが、もうひとつ面白いことを中華料理屋のおばちゃんが教えてくれました。私同様、誤解している人が多いでしょうから、ご紹介しておきます。
私らはデザートを頼んでなかったのですが、食事を終えたところで、おばちゃんは中国のお菓子を出してくれました。
「昨日、北京から知り合いが来てくれて、北京土産をくれたんだけど、私は甘いものがあんまり好きではないので、甘いものが好きだったら食べてちょうだい」
芋羊羹みたいな色をしています。
「それは北京の羊羹。日本は小豆を使うでしょ。中国にも小豆を使う羊羹はあるけど、この羊羹は黄色い豆を使う」
なんとか豆と言ってましたが、忘れました。
「へえ、羊羹は中国由来なのか。日本のものかと思ってた」
後で調べてみたら、諸説あるものの、大元は中国の羊肉スープが有力。羊羹の漢字からしてもそう思えます。
そのスープを冷やしてにこごりにしたものが鎌倉時代から室町時代にかけて日本に入ってきて、小豆と砂糖でお菓子にしたものに魔改造され、江戸時代に寒天を加えて和式羊羹として完成。
これが近代になって韓国、台湾などアジア各国に伝わったようなので、菓子としての羊羹は日本発と言っていいようです。寒天も日本発なので、とくに寒天を使ったものはそうでしょう。北京羊羹の現材料を確認するため、箱をもらってくればよかった。
なお私は羊羹やういろうはゼリーの仲間として、あまり好きではありません。プリンやババロアは好きだし、栗入り蒸し羊羹や水羊羹はまあまあ食えるんですけどね。せっかく出してくれたのに食べないのは失礼だし、好奇心もあったので、いただくことにしました。
ビニールの包装を破って齧りました。好きではないけど、まあまあ食えます。
「甘い。渋いお茶が欲しい」
私は思わずそう言ってしまいました。ジャスミン茶が出ていたのですが、それでは渋さが足りないと不満を言っているように受け取られたかもしれない。
✴︎中国料理「揚子江」 横浜の上海料理店。オリジナルの羊羹が食べられます。あんまり見た目は良くないですが、一度食べてみたくはあります。ゼリーの延長で、にこごりも好きではないので、たぶんこれも好きではないでしょうが。
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