松沢呉一のビバノン・ライフ

インドネシアのチアチア語がハングルを採用したとの話は誇大宣伝—「韓国語を世界の公用語に」ってバカなの?[2]-(松沢呉一)

ハングルの利点と韓国語の欠陥—「韓国語を世界の公用語に」ってバカなの?[1]」の続きです。

 

 

インドネシア民謡メドレーと言語

 

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最近、よく聴いているホロライブIDによるインドネシア民謡メドレー。

 

 

いいなあ。ライブ・ヴァージョンもあります。

これはIDチーム独自の企画と思われ、アレンジもインドネシア人です。IDチームは前にもインドネシア民謡メドレーを公開してますが、今回はIDのメンバーが増え、曲も増えてます。

アーニャ・メルフィッサこぼ・かなえるクレイジー・オリーは、見た目ですぐに名前がわかりますが、あとは名前と顔が一致しません。3人わかるだけでも、誰もわからんK-POPアイドルより個性的。とくにゾンビのオリーは顔がつぎはぎですから、覚えやすい。

顔だけでなく、髪の毛の色、形状が個人を特定する大きな手立てになります。だから、髪の毛の色が多様になります。これがアニメで髪の色が様々であることの理由になっていて、それをもって「白人に憧れている」と決めつけるのがいるわけですが、生まれつき水色や紫の髪の毛の白人はおらんじゃろ。

ここではざっくり「民謡」になっていますが、日本でもお馴染みのブンガワンソロ」が入っていて、インドネシアの大衆音楽クロンチョンです。他にも流行り歌が入っていそうです。沖縄や奄美のように、民謡と流行り歌の境界がない文化圏の方が世界的には多く、インドネシアもたぶんそうです。

「ブンガワンソロ」はインドネシア語ですが、他はさまざまな地域の曲で、それぞれの言語で歌われているいるらしいです。インドネシアは多数の民族からなり、現在も500以上の言語が使用されています。全国どこでも公用語はインドネシア語ですから、公共の場や学校ではインドネシア語を話し、各コミュニティ内では生活言語として自分たちの言葉を使っています。

ということを踏まえていただいて本題。

 

 

「ハングルがチアチア語の公式文字になった」という話は半分ガセ

 

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前回確認したように、国連の公用語は言語の話者数と公用語にしている国の広がりによって決定しています。では、韓国語を世界の公用語にするとぶちあげた「世界公用語(韓国語)国際推進委員会」は、韓国の人口を5億人くらいに増やすか、韓国語を公用語にする国を少なくとも南北朝鮮以外に5カ国くらい増やすか、米国・中国・ロシアくらいの大国が韓国語を公用語にする計画なのでしょう。

確かに表音文字としてハングルには優れた点があります。子音と母音を組み合わせるので文字数が少なくていい。例えば文字が一切ない文化圏で新たに文字を決定する場合は採用してもいいかもしれない。

その例としてハングル信奉者が挙げるのがインドネシアの「チアチア族」です。複数の島からなるスラウェシを構成するブトゥン島南端のバウバウ市周辺に住んでいます。Wikipediaにはインドネシアの主要言語が46種出ていますが、チアチア語は入っておらず、話者8万人のマイナー言語です。

チアチアには文字がなかったので、2008年に韓国の団体が、ハングルを使用するように勧め、翌年、チアチア族が受け入れたことで、韓国では「ハングルは世界一」といつものように自惚を肥大させていきます。

これは当時日本でも報じられて、私も記憶があって、「へえ」と思いました。しかし、前回見た「dmenu」の記事にあるように、一時的なものでしかなく、現在はあまり使われていないようです。

今も道路に立つ、場所を示す表示にはハングルが併記されていることを取り上げて、いかにもハングルが定着しているかのように見せる韓国メディアがありますが、これは韓国の金で設置したもので、いずれも10年以上前のものだと思われます。

 

 

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