柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『青鬼ver2.0』 シリーズ一作目の連日満員大ヒットっていったいどこの異次元のできごとだったんだろうか… (柳下毅一郎) -2,343文字-

FireShot Screen Capture #044 - '映画『青鬼 ver_2_0』|絶賛上映中' - aooni-movie_com_index_html

 

青鬼ver2.0

監督 前川英章
脚本 いながわ亜美
撮影 長野泰隆
音楽 塚田良平
出演 中川大志、平祐奈、松島庄汰、タモト清嵐

 

face「『青鬼』はニコニコ動画で火が付き、関連動画の視聴回数が6千万超を超える大人気フリーゲーム」だそうです。で、その映画化。ver2.0ってなんのことかと 思ったら、「2014年には映画『青鬼』として実写映画化され、各館連日満員となる大ヒットを記録した」という! いや知らなかった。ぼくはこの手のよく わからない映画に関してはかなり詳しいほうだと思うんだけど、こんなものの存在自体知らなかったうえにしかも連日満員の大ヒットすら知らなかったという ね。まあそんなわけでぼくの知らないところでいろいろ盛り上がっているらしい「青鬼」だが、「noprosが制作したこのフリーゲームは、謎を解き、密室 から脱出する。ただこれだけのシンプルなゲームが熱狂的な支持を得た」。ちなみにRPGツクールXPで作ったというこのゲーム、これがヒットしたのって、 それは「フリーゲーム」だからだろ! 無料で遊べるゲームが映画化されて、それを誰が見に来るんだよ! しかるに本作、400人入る劇場で一日5回フルに 回して、入ってる客がぼくも入れて7名! シリーズ一作目の連日満員大ヒットっていったいどこの異次元のできごとだったんだろうか……

さてお話は……

イジメっ子の卓郎(松島庄汰)、ミカ、たけしの三人は、シュン(タモト清嵐)をイジメて不登校に追い込んだ顛末を、図書館でばらばらに突っ立って、視線を 合わせず宙に向かって台詞を言うという演劇的しぐさで語る三人。一方そのころ、委員長(平祐奈)と優等生ヒロシはシュンの様子を見るために家に向かってい た。二組のグループはたまたま学校の裏にある幽霊屋敷、通称ジェイルハウスの前で出会。イジメっ子三人組はジェイルハウスの探検をニコ生で実況すれば受け るだろうと考えたのだ。ところがそこへどこからともなく珍しいアゲハが飛んでくる。昆虫マニアのヒロシはアゲハチョウを追いかけてついふらふらとジェイル ハウスの中に入ってしまう。というわけで三人組+ヒロシが入るとジェイルハウスの扉はがちゃんと閉じてもう出られないのだった。ああ、必然性あるストー リー展開!

 

 

ちなみに演技は、全員がものすごくはっきりと明瞭に一音節ずつ区切って台詞を語る親切設計。おかげで物語の進行はたいへんゆっくりし ているのだが、それでも退屈してしまうくらい中身がない。編集はと言えばありえないほどのカチャカチャ編集で、たけしが高笑いするだけのショットが三つぐ らいのカットに切り刻まれてつなげられているくらいで、まったくなんの意味も、必然性も感じられないまま、ただオフライン編集だと簡単にできるからという だけの理由で切り刻まれる。ここまで無意味で目障りな編集も珍しい。

 

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(残り 1101文字/全文: 2290文字)

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tags: いながわ亜美 タモト清嵐 ニコニコ動画 中川大志 前川英章 塚田良平 平祐奈 松島庄汰 長野泰隆

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