柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『食べて、祈って、恋をして 』 (2010) -ジュリア・ロバーツが華麗に演じる腐れ女の自慢話 [♪akiraのスットコ映画の夕べ]-3,215文字-

食べて、祈って、恋をして ダブル・フィーチャーズ・エディション [DVD]

 

食べて、祈って、恋をして(2010/米)
監督 : ライアン・マーフィ
出演 : ジュリア・ロバーツ、ハビエル・バルデム

 

食べて、祈って、恋をして 女が直面するあらゆること探究の書 原作は、NY在住の美人著者が書いた半自伝的ノンフィクション。世界中の女性に愛される大ベストセラーの主役を、風光明媚なリゾート地を舞台にジュリア・ロバーツが華麗に演じます。(棒読み

オープニングはバリの美しい島々の空撮。リゾート雑誌のグラビアさながらに軽やかに自転車を走らせるリズ(ジュリア・ロバーツ)は、地元で有名な占い師の家を訪れる。手相を見てもらい「2度結婚するだろう。1度は短くてもう1度は長い。あなたはもう一度バリに戻る。」というお告げをありがたく受け、興奮状態でアメリカに帰る。

リズは、優柔不断だが優しい夫スティーヴン(ビリー・クラダップ)とNYCの素敵な一軒家に住んでいる人気作家。友人デリア(ヴィオラ・デイヴィス)の出産パーティで、「ずっと子供が欲しくて何年も買い続けてたの。望むだけじゃダメよ。」と、箱に入った沢山のベビー服を見せてもらい、自分は旅行のパンフが溜めてあることを思い出す。帰宅後夜中に寝床を抜け出し、真っ暗なキッチンで生涯初めて神に祈るリズ。「マジでヤバいんです!どうしていいかわからないから教えて下さい!」 泣き顔どアップの無駄な熱演が鬼気迫る。1分ぐらいの祈り(?)を終えてベッドに戻り「私、離婚したいの」と突然過ぎる告白。ちなみに冒頭からここまで約10分。
ある日、自作の芝居を観に行くと、年下の主演男優デヴィッド(ジェイムズ・フランコ)に一目惚れし、何の苦もなく相思相愛の仲になり即同棲。インドかぶれのカレと行くお祈りも新鮮だし、カレったらコインランドリーで人前で私のパンツも畳んでくれるし、私ってば幸せ! 「でも実は愛してる訳じゃなくて、ダンナの次にちょうど居たってだけなんだけど。」というナレーションが入って戦慄。 夫はというと協議の場で自らの弁護をし、いかに妻を愛していたかを歌で表現するほど狂ってしまっていた。更に突然デヴィッドさえ捨ててイタリアに行くというリズには親友デリアも呆れ顔。「なんでイタリアなの?」と聞くと、「今日何食べた? サラダ? そんなもの食べてるから生気が無いのよ!私に今必要なのはイタリア語とジェラートとスパゲッティなの!!!」とまくし立てるリズ。イッてる女には付ける薬が無い! てかコイツは作家じゃなかったか? イタリアなのに芸術とか完全無視!! 挙げ句の果てに「イタリアの次はデヴィッドのグルがいるインドの寺院で過ごしてから、バリに戻る」と、占い通りにしようとする理由を「だってヨーダみたいな風貌の占い師に言われたのよ!信じないわけないじゃない!」 似てねえよ!さあSWファンの人も怒りましょう!

食べて、祈って、恋をして ダブル・フィーチャーズ・エディション [DVD] 遂にローマ入り。これまたドマーニのミラネーゼ特集みたいな衣装に身を包んだリズは、いかにも外人が好きそうなボロ下宿屋を借りることに。大家に「あんた独身なのね」と軽くジョブをかまされるのだが、この後も頻繁に「結婚してない女はダメ」という台詞が出てきて、主人公の強迫観念が一目瞭然。海外長期滞在のくせに、この女、全く語学を勉強していない。偶然出合った北欧女性と仲良くなり、彼女がイタリア語を教わっている彼氏を紹介してもらい、生ハムとワインを前にどうでもいい会話の勉強。しかし至る所でラブラブのカップルを見かけ、夜中に「私は淋しいの」というイタリア語を唱える女の業の深さ。それでも3週間後、(英語ペラペラの)周囲の助けで注文だけは出来るようになったリズ。でもカルボナーラという台詞に被る映像はどう見てもトマトソースのパスタなんですが。

 

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tags: グルメ ジュリア・ロバーツ ハビエル・バルデム ライアン・マーフィ 洋画

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