柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『体脂肪計タニタの社員食堂』 これでいいのか?タニタのブラック企業への道 (柳下毅一郎)

www_tanitamovie_jp

 

『体脂肪計タニタの社員食堂』

監督 李闘士男
脚本 田中大祐
音楽 小松亮太
出演 優香、浜野謙太、草刈正雄、壇蜜

限定版 体脂肪計タニタの社員食堂―500kcalのまんぷく定食 ico_yan タニタの体組成計は、病院で測定するような体脂肪率や筋肉量を家庭で簡単にはかれる画期的な商品であった。わが家でも愛用しております。そんなタニタは全社で健康管理をやっており、社員食堂はヘルシーメニューで有名で、そのレシピ集 が出版され、はては丸の内に支店まで出て連日満員で大人気だという。料理。ヘルシー。ダイエット……すべて女性(F1層)の好物じゃないか!

「じゃあ、映画にすればいいんじゃない?」

というわけで出来上がったのがタニタの社員食堂映画版。いや「食堂」の映画化ってどういうことなんだよ!って突っ込む人はどこにもいなかったのか。てかこれで良かったのかタニタ!

映画は「タニタ食堂」の誕生秘話である。豪腕のワンマン社長(草刈正雄)率いるタニタは、画期的な体組成計を開発した。販売キャンペーンを担当するのは息子の副社長・谷田幸之助(浜野謙太)である。すべてにおいて中途半端、生まれてからこの年まで満足にひとつのことをやりとおしたこともない幸之助のことを父はまったく信用していない。なんせ大学卒業時には「ぼくは旅人になるから」と就職せず、25のときに「やっぱマズいかな」と友達とベンチャーを立ち上げ、数年後にあえなくつぶれて父親に拾ってもらい、いまは副社長という親の七光りの甘ったれのボンボンの無能のボンクラだ! そりゃあ社員も「うちの会社、長くないかもねえ」とぼやきもする。甘ったれの二代目は体脂肪率40%越えの超肥満で、健康診断では「このままだと数ヶ月の命ですね」と引導を渡される。そんなデブが担当では、どんなに画期的な商品を開発しても売れるわけがない。どうしよう……と思いあぐねた結果、発売日までの三ヶ月間、デブ社員たちをダイエットさせ、それをネットで実況中継して体組成計の効果を知らしめようということになったのだ。プロジェクト・リーダーとなった幸之助はデブぞろいの社員の中から体脂肪率40%越えの三人を選び出し、四人でダイエットに挑む。ついては高校の同級生だった栄養士、菜々子(優香)を抜擢。就職浪人中だった菜々子はいきなり社員食堂をまかされ、責任者としてダイエット・メニューを担当するのだった。

いや、これいいのかタニタ!

ここまででわかるのは以下の事実だ

1)タニタは縁故とコネがハバをきかす旧弊依然たる企業である
2)タニタの社員はデブばかり
3)たとえ体組成計があったとしても、それだけではなんの役にも立たない
4)この映画はフィクションであり、実在の(株)タニタとはなんの関係もありません

 で、そこまでして連れてきた菜々子は実は料理が超ヘタ。ロクに料理したこともなく、ダイエットに関しても机上の知識のみ。毎日レシピ本をとっかえひっかえしてメニューを決める始末だ。いや、これ本当にいいのか?

唯一頼りになる男、社長の草刈正雄は過労のためぶっ倒れる。入院した病院にはミニスカナースの壇蜜がおり、何かというと身体をひっつけて社長の血圧はあがる一方。この会社、長くないかもしれん! ちなみにこの映画、いきなり社員の健康診断で下着姿の女子社員がずらりと登場するなど、エロい場面ばかりがサブリミナル的に記憶に残る。何を狙ってるのかタニタ!

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tags: かもめ食堂 グルメ 優香 壇蜜 李闘士男 浜野謙太 矢野顕子 草刈正雄

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