柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『銀座並木通り クラブアンダルシア』 「モナコ国際映画祭」ってなんだよ!和田秀樹って誰だよ!最後までよくわからない銀座ホステス映画 (柳下毅一郎) -2,895文字-

FireShot Screen Capture #028 - '銀座並木通り~クラブアンダルシア~' - ginzanamikidori-movie_com

 

銀座並木通り クラブアンダルシア

監督 和田秀樹
脚本 佐上佳嗣、和田秀樹、倉科遼
撮影 岩松茂、三栗屋博、今泉尚亮
音楽 三枝成彰
出演 松方弘樹、姿月あさと、江口ナオ、渡辺大、阿部祐二、鎌田奈津美、木村祐一

 

ico_yan これもご当地映画というんですかねえ。お水業界漫画の帝王倉科遼原作の銀座クラブ漫画が松方弘樹主演で映画化、当然ヒューマントラストシネマ有楽町で鑑賞。ああ、銀座並木座があれば……(並木座ではこんな映画は上映しません!)。何が凄いって公式サイトを見たら監督の履歴が書いてない! ええと、チラシによれば「監督は精神科医・大学教授の顔を持ち、『受験のシンデレラ』『わたしの人生~わが命のTANGO~』などモナコ国際映画祭でも評価も高い和田秀樹」ってだよ!!!「モナコ国際映画祭」ってなんだよ!!!ちなみにモナコ国際映画祭では「受験のシンデレラ」は「最優秀作品賞、最優秀男優賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞の4部門を受賞」だそうである。そんなことまで書かれておりあまりにも充実しすぎなWikipedia読んでも、この人がいったい何者なのか、なぜそんなにもモナコで評価されているのかさっぱりわからないんだけど、なんなのよ本当に……

「昼と夜でその様相を変える町、銀座。夜は最高の女と最高の男が集う町……」とはじまる松方弘樹のナレーション。彼こそは銀座では珍しいクラブの男性オーナー、奥澤である。ナレーションのあいだ銀座五丁目のクラブ街の街灯風景が映るのだが、このあとしょっちゅう場面転換のたびに同じ風景が映るのであっという間に飽き飽き。和田さん、町並み写して尺を稼ぐのは止めよう!

そんな奥澤の店、クラブ・アンダルシアは作曲家三枝成彰も通う銀座の名門。そこへやってきたはじめの客がIT企業社長増田(渡辺大)である。「もう六本木のキャバクラには飽きた。やっぱり大人の資格は銀座で飲むことだよね。金ならいくらでもあるから!」と成金丸出しのIT社長。紹介でついた担当は美和(江口ナオ)だが、増田は美貌の恭子(姿月あさと)が気になっている。

「あの人きれいだよね」
「あら。でも銀座のお店は永久指名で、途中で担当を変わることはできないんですよ」

 と銀座一口メモが入るところが倉科流。そういうわけで六本木のキャバクラ並みに「ほれいちばん高い酒入れて!」と大盤振る舞いして120万円也をブラックカードで払う増田。そのまま出たところでキャッチに捕まって近所のライバル店クラブ・エレガンスに連れ込まれる。ここでまた大金を使った増田は前後不覚になるまで酔っぱらい、家まで送ってくれたホステスに裸にされて写真をとられ、既成事実を作られてしまうのだ……って何これ? 銀座の店はぼったくりだから気を付けろってことなのか? ともかく銀座のクラブだからと言って特に高級感があるわけでもなく、ヒロインの姿月あさとも特に魅力的なわけでもない地味な中年女。六本木のキャバクラ出世ストーリーと何が変わるわけでもない下品な物語が展開するのだった。

 

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tags: モナコ国際映画祭 三枝成彰 倉科遼 和田秀樹 地方映画 姿月あさと 松方弘樹 江口ナオ 渡辺大 町おこし 鎌田奈津美

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