『トースト ~幸せになるためのレシピ~』 ロンドンの花形シェフのサクセスストーリー・・・かと思って観た人は大困惑 [♪akiraのスットコ映画の夕べ] -3,459文字-
『トースト ~幸せになるためのレシピ~』(2010/英)
監督 : S・J・クラークソン
出演 : ヘレナ・ボナム・カーター、フレディ・ハイモア
著名な料理人でありフードライターでもあるナイジェル・スレイターの自伝、『Toast: The Story of a Boy’s Hunger』をもとにしたTVムービー。イギリスの保守的な田舎町に住む少年が周囲の反対を押し切り、ついにはロンドンで花形シェフとなる心温まるサクセス・ストーリー!
・・・だと思って観た人が大変困惑するというまさかの不思議展開。
時は60年代後半、9歳の少年ナイジェル(オスカー・ケネディ)は気むずかしい父(ケン・スコット)と優しい母の3人暮らし。このお母さん、計量もまともにできず、料理下手というにはあまりにもひどすぎて見ているこっちが不安になるほど。そんなわけで家族が食べる野菜は全て缶詰。しかしその温めすら鍋を焦がすほどなので、結局は毎晩トーストのみを食べる一家であった。お父さんの短気は全て栄養不足からではないか…としか思えない貧弱なメニュー。夜な夜なナイジェルの部屋からは、「ああ」「おお」と恍惚のうめき声が。9歳なのにおませねえなんて思ってたら、布団の下ではなんと料理本の写真にうっとりしていたのでした。さびしすぎるぞナイジェル! ちゃんと食わせてやれよ!
ある日かっこいいバイクに乗って、庭師の若い男ジョシュがやってきた。両親と違ってマッチョで健康そうなジョシュは、もやしのナイジェルに市販のポークパイの美味しさや、庭の取れたて野菜の美味しさを教える…んですが、この家庭、両親が潔癖症すぎて生の野菜を扱えないために缶詰ばかり食べているって説明があったのに、なぜ家庭菜園をやっているのか! 結局、息子と庭師の仲の良さに両親が不安になり、ペド疑惑をかけられた庭師はクビに。
母にまかせていたら美味しい物が食べられないので、なけなしのお小遣いでミートソース缶とパスタを買い、自ら初めて料理したナイジェル。「こんな堅いもの食べられない」(注:ゆでる前のパスタ)とかさんざんイチャモンをつけられても我慢して両親にふるまったところ、優しい母親さえ一口も食べずに、結局トーストが出しなおされたという恐怖のトラウマ体験。ていうかこれでも優しいお母さんなのか??
それでもグレずにまじめに育ってきたナイジェルだったが、もともと喘息持ちの母親はどんどん身体を壊していった。(だからそれは明らかに栄養不足では…) 療養も空しく、息を引き取った母。2人きりの生活で、父が作るほとんど生の食事としつけという名のDVに疲れきったナイジェルは、「男を喜ばすにはまず胃から!」というクラスメートの助言により父の好物の魚料理を作ったことで、2人のギクシャクした関係も改善したかのようだった。
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