柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』 一年の最後の〆にリア充エクスプロイテーション・デート・ムービー (柳下毅一郎) -3,491文字-

FireShot Screen Capture #114 - '映画『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』公式サイト' - miracle-movie_com

 

MIRACLE デビクロくんの恋と魔法

監督 犬童一心
原作 中村航
脚本 菅野友恵
撮影 蔦井孝洋
音楽 上野耕路
出演 相葉雅紀、榮倉奈々、ハン・ヒョジュ、生田斗真、クリス・ペプラー、劇団ひとり

 

クリスマス・イブ face 原作は100回泣くことの中村航。泣ける恋愛小説の「名手」が山下達郎の「クリスマス・イブ」を元にした小説を映画化、ということで完全にクリスマス時期向けのハイ・コンセプト映画、リア充エクスプロイテーションのデート・ムービーである。犬童一心もこんなん撮るようになってしまいましたかねえ……といささか暗い気持ちで見に行ったけど、コンセプトとは別に犬童監督もやることはやってる感じ。とは言ってもこのコンセプトにこのキャストじゃ何をやってもどうしようもない感じはあるんだけど。

クリスマスこそ仕事が引きも切らないサンタクロースだが、それ以外の三百六十四日は一人孤独に北極で暮らしている。その孤独や悲しみはよどみ、やがてダークなサンタクロース、デビル・クロース=デビクロとなる。デビクロの唾は「アンゴルモアのいかづち」と呼ばれ、触れたものをすべて焼き尽くす。だがすべてがゼロになったときには本当に大切なものだけが見えてくる……いかにも中村航さんが考えそうな「ひねったクリスマス・ストーリー」である(ひねったつもりで何もひねれていない)。

 

 

さて、物語は子供時代からはじまる。イジメられているチビで気弱な小学生男子と、そのボディガードとなっている気が強くて大柄な小学生少女。彼女がイジメッ子から取り戻した「自由帳」に少年はデビクロのコンセプトを描いている。そしてそこには「月の光を背負い、赤い衣を着て、左手には未来と科学、右手にはヒョウをしたがえた麗しき賢者がやってくる。そのとき運命が変わる」という謎の予言を記していたのだった。

それからウン年……

 

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(残り 2727文字/全文: 3510文字)

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tags: クリス・ペプラー ハン・ヒョジュ 上野耕路 中村航 劇団ひとり 市川実和子 榮倉奈々 犬童一心 生田斗真 相葉雅紀 菅野友恵 蔦井孝洋

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