柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『日本ローカルヒーロー大決戦』 ご当地ヒーロー版アベンジャーズ!似たような赤いのが凹られて、似たような仮面のやつが必殺技で倒して・・・見てるこっちは「おまえ誰だよ!」(柳下毅一郎)

FireShot Screen Capture #039 - '映画『日本ローカルヒーロー大決戦』| 2015年11月7日(土)公開決定!!' - movie_yatsurugi_net

 

『日本ローカルヒーロー大決戦』

企画・制作 飯澤慎
監督 上倉栄治
脚本 安江渡
音楽 大津稔、今川雄市
出演 花田俊、新田匡章、辻彩加、藤田薫子、冨江洋平

 

face ローカルヒーローとは日本各地でご当地の平和を守っている変身ヒーローたちのことで、ゆるキャラと共に各地で大流行しているという(頭が柔らかいところをアピールしたがる自治体職員の肝いりで地方自治体の啓発活動に動員される)。

その彼らが地球の危機に際して集まった! つまりローカルヒーロー版アベンジャーズ! というスケールが大きいのか小さいのかよくわからない映画がやってきた! と思いきや、映画を見てはじめて知る衝撃の事実、実はチバテレビでは木更津の平和を守るご当地ヒーロー「凰神ヤツルギ5の活躍を描く特撮番組が放映されており、2011年からはじまってすでに第五シーズンに突入するまさかの人気番組なのだった。その余勢をかって千葉県蘇我市のショッピングモール、フェスティバルウォーク蘇我では日本ローカルヒーロー祭なるものがおこなわれ、そこには北海道から沖縄まで日本各地のローカルヒーローが大集結してファンと一緒にもりあがっているという。いやまさか千葉がこんなにローカルヒーロー熱に浮かされていたとは。そんなわけで、実はこの映画実質的には『鳳神ヤツルギ5』の劇場版なのである。だもんで映画がはじまるといきなり倒れているタケル(花田俊)にメンバーが駆け寄って「タケル、どうしたの!」と説明もなく叫んだり、ヤツルギの敵である恐怪帝国の面々が「おまえたちを助けるわけではないが、地球が滅ぼされたら困るからな」と憎まれ口を叩きながら助太刀にあらわれるというお約束の名場面があったりするわけだが、見てるこっちは「おまえ誰だよ!」としか思えないのであった……

 

 

さて日本ローカルヒーロー大会に急ぐ子供たち、遅刻しそうになったので危険だと言われていた森に入り、たまたま見つけたほこらで封印の剣を壊してしまう(全部このガキどものせい!)すると予想されたとおり封印されていた闇の煉獄大魔王が復活する。煉獄大魔王は魔神四天王をしたがえて地球を滅亡させようとするが、そこにヤツルギをはじめ蘇我に集結したローカルヒーローたちが立ちあがる!

まあそういうわけで、以下四天王が意外とショボくてヤツルギ一人に凹られ、だがそこで大魔王が出現して一撃でヤツルギを倒してタケルは昏睡状態(これが冒頭の場面)。大魔王からパワーを分け与えられた四天王の攻勢の前にローカルヒーローは気息奄々、だがそこで子供たちの祈りが通じてヤツルギが奇跡の復活を果たして云々というあたりの展開はもうすべてお約束すぎるのでどうでもよくて、気になるのは当然ローカルヒーローたちの活躍のほうだろう。

この映画が企画された理由のひとつ(そして劇場版『ヤツルギ』ではなく『日本ローカルヒーロー大決戦』として公開されなければならなかった最大の理由)が彼らローカルヒーローの存在だろう。ご当地ヒーローを大量に出演させれば、それぞれの出身地の映画館で上映できる……というような嫌らしい計算が働いていたのはまずまちがいない。だから個々のヒーローにもそれなりの活躍の場面を作らなければならないわけである。なのでパワーアップした四天王がそれぞれローカルヒーローを五人ばかりずつ別空間に拉致し、そこで一方的に凹られるかと思いきや、ヤツルギのパワーを得て大逆転というコーナーが設けられている。だがここには大いに問題があって……つまり誰が誰だかわからないのだ!

この手のご当地ヒーロー、大部分は東映戦隊のパロディというかオマージュのようなものなので、デザインもカラーもだいたい一緒。しかも戦ってる最中に名乗りをあげないもので(一応必殺技を出すときには技の名前を言っていたが、それだけでは……)、なんか似たような赤いのが凹られて、似たような仮面のやつが必殺技で倒した……ようにしか見えない。

 

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tags: 上倉栄治 今川雄市 冨江洋平 劇場版 千葉県 地方映画 大津稔 安江渡 新田匡章 木更津 特撮 町おこし 花田俊 藤田薫子 辻彩加 飯澤慎

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