『悪と仮面のルール』 もうねえ、おかしな設定をこしらえるために「狂った大富豪の仕業」にするのはたいがいにしてほしいんですよ(柳下毅一郎)
→公式サイトより
『悪と仮面のルール』
監督・編集 中村哲平
原作 中村文則
脚本 黒岩勉
撮影 鯵坂輝国
出演 玉木宏、新木優子、吉沢亮、中村達也、光石研、村井國夫、柄本明
「11歳の久喜文宏は、この世に災いをなす絶対的な悪=“邪”になるために創られたと父から告げられる」
ってなあ! またどこかで狂った大富豪がゲームをしてるのか。もうねえ、おかしな設定をこしらえるために「狂った大富豪の仕業」にするのはたいがいにしてほしいんですよ。狂った大富豪が創っていいのは密室状態になる館だけだよ! ともかくなぜかはわからないが自分の子供を絶対的な悪=邪(じゃ)に育てようと思った大富豪がおりまして、子供に説明するのである。
「おまえの命はわたしが作った。ひとつの邪(じゃ)となり、この世界を不幸にする存在となるように……ねがわくば、この世界がいつか終わるように。おまえを邪にするために、十四歳になったらおまえに地獄を見せてやる。こんなことをおまえに言うのはわしが今ひどく酔っているから。それにおまえの母親が善良だったから。それへの敬意だ」
だから酔っ払ってベラベラ計画を喋るなよ!
で、この狂った大富豪、その計画のために自分の息子と同い年の少女香織を孤児院から引き取り、一緒に育てる。二人が愛しあうようになったところで香織を損なえば、運命に絶望した文宏は邪になるというわけだ! 理由もわからなければ実効性もさだかでない計画をたてた父であったが、こんなところで計画を喋ったもので、十四歳になる直前、香織を守ろうとした息子に殺されてしまう(行方不明として処理)。文宏はそのまま失踪したが、久喜家の莫大な財産を持ったまま、名前と顔を変えて戻ってくる。というわけでなんか伊達邦彦か朝倉哲也みたいなダークヒーローのピカレスク・ロマンなのかな……と思っていたのだが、整形手術を終えて「新谷弘一」となった文宏(玉木宏)が「死人の名前と顔をもらって、新しい人生をどうぞ」と言われて
「ぼくは生まれ変わって楽しむみたいなことを考えているわけではありません。幸福なら、ずっと昔にぼくは経験しています。ぼくの人生も、いいところで区切れば、幸福だった物語として提示できる……」
云々と長ったらしく無意味なセリフを語りはじめるところで早くも嫌な予感が。この映画、どいつもこいつもよく喋るのだ。メソメソと長いセリフ喋るばかりで、ちっとも悪の活躍をしない。非常におセンチな映画なのである。だいたい、この「新谷」、新しい身分を手に入れて何をするかというと、父のところで働いていた探偵(光石研)に「香織が何をしているか調べてください。金に糸目はつけません」と依頼。ひたすら過去の女にしか興味がない。
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