柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『さらば青春、されど青春。』 千眼美子(清水富美加)が幸福の科学映画に初登場!大川総裁の自伝的ストーリーの「青春夕陽映画」 (柳下毅一郎)

公式サイトより

 

さらば青春、されど青春。

監督 赤羽博
脚本 大川裕太、赤羽博、松本弘司
製作総指揮 大川隆法
撮影 木村弘一
音楽 水澤有一
主題歌 千眼美子
出演 大川宏洋、千眼美子、石橋保、芦川よしみ、龍輝、長谷川奈央、雲母、梅崎快人、ビートきよし、大浦龍宇一、木下ほうか、大島さと子

 

 

face一九五六年七月七日、午前七時。ニューヨーク、ツインタワーを見上げる中道真一(大川宏洋)。

「このビルが本物なのか、心の中の声が本物なのか、中道真一、どちらを選ぶ!」

 ついにやってまいりました千眼美子(清水富美加)が幸福の科学映画に初登場! 満を持しての登場だけに、企画もそれなりの格が必要ということで大川総裁の青春時代を描く自伝的ストーリー。これ、発表段階から大いに気になっていたのはこのタイトル、にもかかわらず空が青くなく夕陽に赤く染められていることである。いわば『ALWAYS 三丁目の夕日』効果と言うべきか。青春だから青空と思ったら大間違いで、ひたすら後ろ向きで夕陽ばかり見ている。映画の中でもたびたび夕陽を見つめるシーンがあり、ひたすらふりかえってばかり。ふりかえる青春夕陽映画、これから増えてきそうな気配がある。

 

 

さて、物語は1976年、中道真一の東城大学入学からはじまる。四国の片田舎から上京してきた中道、ハンナ・アーレントを原語で読み、同級生に向かって

「君たちにはちょっと難しいかもね。でも彼女はこれから有名になると思うよ」

 とナチュラルに見くだす嫌味っぷりを遺憾なく発揮する。学生下宿には原書が積み上げて非常に嘘くさいのだ(「学生時代に千四百冊の本を読んだ、という自慢がくりかえされる)のだが、その中でなぜか渡部昇一の『知的生産の方法』だけが異常にリアル。これだけは間違いなく本当に読んでいたんだろう。

そんな中、中道青年は才色兼備の同級生、法曹一家の南理沙(長谷川奈央)に恋をする。で、当時のことゆえ恋文を送りつけるわけだが、それが

「きみはこの風の声を聞かないか?/吹き渡るのは清楚な風/ああ、そこに何かが揺れている」

 みたいなポエムで、何通書いても返事がない。映画の中では彼女を理想視する中道に、理沙が「あなたが勉強している姿は歴史上の偉人のように気高い」と身を引くみたいな話になっているんだが、これ普通にキモがられてるだけだよな~

 

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