柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『美味しいごはん』おむすびも食べられる食事付き上映会で「ひかりのごはん」の秘密は明かされる? (柳下毅一郎)

公式サイトより

 

美味しいごはん

監督 ㈱ぶんちん
編集 奥田啓太
撮影 奥田啓太他
音楽制作 一般社団法人ファミリーラボ
出演 ちこ、長尾瞳

 

face お食事ゆにわは大阪府枚方市にある食堂である。食べるだけで開運する、人生が変わると大評判で、全国から予約が殺到する人気店だという。その美味しいごはんを作るのは開運料理人こと店長ちこである。ひかるおむすびとは、人生が変わる食事とはなんなのか? それを知りたければちこ店長と「ゆにわ」の一年間を追いかけたドキュメンタリー映画『美味しいごはん』を見るしかない! というわけでひかるおむすびも食べられる食事付き上映会とやらに行ってきたのである。『麻てらす』もそうだったが、この手のものは思いを分かち合いたい人たちが押し売りのようにもよおす自主上映イベントに行くしか見る手段がない。まあひかるおにぎりを食べられるんなら、それもいいか……それにしてもこの映画、実質的な監督は編集撮影もつとめる奥田啓太らしいのだが、画面でのクレジットは「㈱ぶんちん」(奥田啓太の所属会社)だったり、音楽も一般社団法人が作っていることになっていたり(1/fゆらぎなぞしこまれていそうな不安定な音楽)、できるだけ個人名を消しエゴを消そうとしているところが不気味にも思える。

 

 

映画がはじまるといきなり地球!からズームインして大阪は枚方、お食事ゆにわを筆頭に、べじらーめんゆにわ、オーガニックスイーツのパティスリーゆにわ、ゆにわマートなどいずれも意識の高いゆにわグループが紹介される。その中核であるお食事ゆにわの店長が「ちこ」嬢である。

「ゆにわ=”斎庭”とは、古神道の言葉で“祭事などの際、神様をお招きする場所”という意味があります。人が神様に捧げる気持ちで、食べ物をおそなえし、歌い、踊り、楽しい空間に、神様はやってきます。『ゆにわ』もそのような場所となるよう、名前を頂戴しました」

 というわけで、毎朝お店の神棚にお祈りを捧げてから料理をはじめるちこ店長の語り。

「私達は“日本人食”を目指しています」

 日本人食というのはお米と味噌汁を中心に、和・洋・中華の料理を柔軟に取り入れた家庭料理のことなのだという。てっきりこの手のものだから玄米食かマクロビかベジタリアンかと構えていたのだが、そこらへんはわりと柔軟らしい。唯一、こだわりがあるのはご飯、お米である。「稲は天照大神からさずかった神様のさずかりもの」(いや稲作自体は中国からの伝来だろ!)というくらいで、この映画の中ではほぼ「ゆにわ」のご飯がいかに素性正しく素晴らしいかが語られる。お米は埼玉で無農薬有機稲作を実践する網本欣一氏の(ちこ店長が田植えとか稲刈りとかを体験しに行く萌えカットあり)作ったお米を、毎日店員がハンドピッキングしていい粒だけを選び出し(!)、祈りを捧げながら土鍋で炊く。炊きあがったごはんが「ひかりのごはん」。「ひかりを食べたかった」ちこ店長が握った「一体感を感じられる」いのちのおむすびである。

この「ひかりのおむすび」の由来、ちこ店長の高校時代にまで遡る。中学時代は明朗快活だったちこ嬢、高校に入ったころから反抗期かホルモン異常かやたら体の不調を訴え、学校も休みがちになる。見かねた兄が「じゃあおまえも塾に来い!」と自分が通っていた学習塾になかば強引に連れてゆく。塾は気に食わなかったのだが、唯一ちこ嬢が衝撃を受けたのが、塾長が生徒への夜食として握ってくれたおむすびだったのである。そのおむすびに感激したちこ嬢、「自分もこんなおにぎりを作れるようになりたい!」と一念発起し、大学卒業後に同門の先輩長尾瞳(グレートティーチャー㈱代表取締役)らと立ち上げたのがこの食事処ゆにわなのである……ちなみに兄もそのままゆにわファミリーに加わったらしい。

 

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