『ぼくはぼく、クジラはクジラで、泳いでいる。』 世界でいちばん嫌われ者の博物館で「くじら、すっげー」。けど、外国人が言いたいのは「でも食うんだろ!」 (柳下毅一郎)
→公式サイトより
監督 藤原知之
脚本 菊池誠
撮影 高木風太
音楽 稲岡宏哉
出演 矢野聖人、武田梨奈、岡本玲、近藤芳正、鶴見辰吾、本谷紗己
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和歌山県太地町発のクジラ映画! 劇中で鶴見辰吾が自嘲気味に「世界でいちばん嫌われ者の博物館です」というとおり、『ザ・コーヴ』とシー・シェパードのせいで世界的に有名になってしまったイルカの追い込み漁の太地町、そこにある町立「くじらの博物館」が舞台である。くじらの博物館は展示だけでなく、クジラのショーもおこなっている。ところでこの映画の中では登場する海棲哺乳類はすべて「クジラ」と呼ばれており、「イルカ」という言葉は一度も出てこないのだった。まあ「イルカ」と「クジラ」はサイズの違いだけでどっちでもいいらしいので、太地町ではすべてクジラと呼ぶ決まりなのかな。
さて、そういうわけで「クジラ、すっげー!」が口癖の飼育員鯨井タイチ(矢野聖人)を主人公に、クジラショーをめぐる人々のおりなす人間ドラマが描かれる。これ群像劇なのだが、映画の中ではさっぱりキャラクター紹介がされない。見ながら脳内補完するとこんな感じだ。
飼育員のリーダーはイケメンの滝本。彼の一の部下でヤンキーのりの金髪が渡辺。優しいさやかは滝本の恋人。山口はクジラのトレーナーとしては一流だが、最近は年の歳妻に夢中で仕事もサボリ気味。そんな人々が集っている場所にやってきたのが東京の水族館から出向してきた白石ユイ(武田梨奈)である。ゆるふわOLみたいな格好でやってきたユイだが、着替え中に更衣室に入ってきたタイチをハイキック一閃で蹴り飛ばすなどさっそく武闘派の側面を発揮。歓迎会では
「夢は日本一のトレーナーになることです!」
と意気軒高。渡辺からは「クソ生意気な女」とムカつかれている。ロッカーに「新人」と書かれて「新人じゃねーっつーの」と毒づいてるくらいだし、東京でそれなりの実績を積んできた即戦力扱いという設定なのだと思うんだが、不思議なことに彼女が技を見せる場面がひとつもないのだ。うまくいかなくて凹む場面はいくらもあるのだが。普通は登場とともに華麗に技を魅せる→東京仕込みが通じず凹む→太地町スタイルで大成功!となるものだと思うのだが、これだと口先だけの人にしか見えない。キャラクターの紹介がうまくいってないのである。
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