『ビブリア古書堂の事件手帖』 残念な結果に「おっぱいだけあればいいのか!」と黒木華の血の叫び。しかし足りなかったのはおっぱいではなく、書物狂いなんだよ
→公式サイトより
監督 三島有紀子
原作 三上延
脚本 渡部亮平、松井香奈
撮影 阿部一孝
音楽 安川午朗
主題歌 サザンオールスターズ
出演 黒木華、野村周平、成田凌、夏帆、東出昌大、高橋洋、桃果、渡辺美佐子
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かつてTVドラマにもなった人気ライトノベルの映画化である。TV版ではヒロインを演じたのがまさかの剛力彩芽で、ショートヘアにミニスカがまったく栞子さんのイメージではない! と叩かれたのも記憶に新しい。剛力ちゃんゴリ押し問題の象徴ともなった感がある。で、今回はどこからどう見ても文系女子の黒木華がハイネックのブラウスにロングスカートという大時代にもほどがあるファッションで演じる。文句あるか! と言いたいところだが劇場は閑古鳥。あれか、おまえらやっぱりおっぱいか、おっぱいだけあればいいのか! と黒木華の血の叫びが聞こえそうな残念な結果となってしまった。
さて、物語は鎌倉で古書店をかまえる美人古書店主笹川栞子(黒木華)が古本を見ただけですべてを読み解くスーパー古本探偵ぶりを発揮する。個人的には『時計じかけのオレンジ』が取り上げられない時点で栞子さんオレの原稿読んでないのか……と一気にどうでもよくなってしまったわけですが、そんな栞子さんに幼いころのトラウマで活字の多い本は読めなくなってしまった無職五浦大輔(野村周平)(本を開くと目眩と動悸に見舞われるという。原作読んだときから思ってるんだが、そんなトラウマってありうるのか)が絡むわけである。映画の中では現代と同じくらいの比重で大輔の祖母の話が語られるのだが、その部分は彩度を落としてセピア風の画面となる親切設計。まあ、わかりやすいのはいいことだよね。
大輔は祖母(渡辺美佐子)の本棚の本を勝手に取りだして怒られ、以来活字が読めなくなった本読めない人間である。その元凶たる祖母は鎌倉でごうら食堂という大衆食堂を経営していたのだが、先ごろ亡くなった。遺品を整理することになった大輔は、遺品となった本を見ているうちに、トラウマの元凶たる本 –岩波書店の夏目漱石全集の「それから」– に夏目漱石の署名が入っているのを見つける。本を祖母に売ったらしい「ビブリア古書堂」で訊ねてみよう、とえっちらおっちら自転車こいでビブリア古書堂に向かう。あ、言い忘れたが本作の舞台は鎌倉。最近流行りの江ノ電沿線映画である。
本屋に入るとそこにいるのは眼鏡の楚々たる美女栞子。
「拝見します」
とチェックをはじめる。
「なるほど。大輔さんは夏目漱石全集の『それから』を読もうとして厳しく叱られた。それでトラウマになってしまった。お祖母さまは本をたいへん大事にしてらした。もしも秘密を知られ……はっ!」
ここまでわざとらしい失言ははじめてだ。
「なぜこの本だとわかったんです? 秘密ってなんです?」
問われて得々として語りはじめる栞子。
「あなたはひらがなしか読めなかったので、全集の中でたった一冊のひらがなのタイトルの本を読もうと取り出しました。お祖母さまはその本の署名を見られたくなかったので、サインに偽造したんだと思われます。よく見ると“田中嘉男”という字と“夏目漱石”は筆跡も使っているペンも違います」
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