柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『かぞくいろ –RAILWAYS わたしたちの出発–』バラバラだった心が鉄道でつながる、それがRAILWAYS!特別協賛の出水酒造、協賛阿久根市がお送りしました

公式サイトより

かぞくいろ –RAILWAYS わたしたちの出発–

監督・脚本 吉田康弘
エグゼクティブプロデューサー 阿部秀司
撮影 柴崎幸三
音楽 富貴晴美
主題歌 斉藤和義
出演 有村架純、國村隼、桜庭ななみ、歸山竜成、木下ほうか、筒井真理子、板尾創路、青木崇高

 

→2018年ダメ映画ぶったぎり新年会!
『皆殺し映画通信』LIVE 開催のお知らせ

 

faceえちてつ物語』は福井のローカル鉄道を舞台にしているが、日本には地方のローカル鉄道を舞台にした映画シリーズ、RAILWAYSシリーズがある。というわけでこちらは本家RAILWAYSシリーズのほうである。RAILWAYSはROBOTの製作で(ROBOT創業者でもある阿部秀司がプロデュースをつとめている)で、日本各地のローカル線をとりあげてゆくストーリー的には無関係な映画シリーズ。第一作は2010年の『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』。監督は錦織良成なので当然島根のローカル線一畑電車が舞台。第二作『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』(2011)では『ねこあつめの家』などでおなじみ蔵方政俊監督が富山地方鉄道を取り上げる。監督のセレクションがあまりに当WEBマガになじんでいて怖くなってくる。というわけで七年ぶりの第三弾では舞台は飛んで鹿児島、フィーチャーされるのは第三セクターの肥薩おれんじ鉄道である。肥薩おれんじ鉄道、もともとは鹿児島本線の八代-川内間の線路である。九州新幹線の開通とともに、並行して走る在来線を廃止するJRの方針で廃線にされそうになったのだが、地元の足として残したい沿線自治体などの出資でかろうじて生き残った鉄道なのだ。だからホームや駅舎は旧国鉄からひきつがれた立派なもので、十二両くらいの列車を止められるホームがあるのに走っているのは二両程度のローカル列車なので、非常にアンバランス。現在もなお経営は苦しいようで、RAILWAYSシリーズに登場するのも宣伝の一助ということか。

 

 

子連れで延々と鉄道に乗り、はるばる鹿児島県阿久根市までやってきたのは奥薗晶(有村架純)。とある家の前で暗くなるまで待っている。帰ってきたのがこの家のあるじ奥薗節夫(國村隼)である。

「はじめまして。修平さんの妻の晶です」

呆然の節夫、とりあえずと家に迎え入れる。すると黙って骨壷を差し出す晶。

「修平さんです」
「○×△……死んだのか!?」
「やっぱり!留守電聞いてない!」

そう、妻に先立たれて一人暮らしの肥薩おれんじ鉄道運転士節夫は、家の留守番電話すら聞かないまま放置していたので、東京在住の一人息子がクモ膜下出血で急死して葬儀まで終わっていることをまったく知らず、その間泣き声のアキラの留守電が延々と吹き込まれているという始末。まあ自分も留守電から逃げまわる習性があるのでちょっとわからないでもないが、晶も住所わかってるんだったら電報くらい打ちなさい。修平(青木祟高)は実は父と折り合いが悪かったらしく、前妻の死後まったく連絡を取っていなかったのだという。

「それで、これからどうするんだ」
「こちらでお世話にならしていただきたいと……」
「えっ! 家は……?」
「家賃未納で追い出されたんです。実は、修平さんが仕事仲間に騙されて借金を背負ってしまって……」

だからって会ったこともない(しかも夫の死のときにひどく冷たい対応をされたと憤っているばかりの)相手にいきなり頼ろうとするか? どうやら仕事もないらしいし、頼る友達も実家もないという有村架純、いったい東京で何をやっていたのか。修平との出会いはスーパーで出会ってのナンパだし(最後の一袋のニンジンを取り合いになって二人で分けるというルビッチ風出会い)、ぽろっと「お店で働いていたころは……」ともらしたのが気になるんだが、やっぱり夜のお仕事だったんだろうか……

 

443f2910ab9081e6c5fb7aa8c00ee84d2

(残り 1686文字/全文: 3335文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

tags: ご当地映画 ローカル鉄道 吉田康弘 國村隼 富貴晴美 斉藤和義 有村架純 木下ほうか 板尾創路 柴崎幸三 桜庭ななみ 歸山竜成 筒井真理子 阿久根市 阿部秀司 青木崇高 鹿児島県

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ