柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『九月の恋と出会うまで』 なんでこの予定調和の自作自演が「泣ける恋愛ストーリー」なのか、ほんまわからんわー

公式サイトより

九月の恋と出会うまで

監督 山本透
原作 松尾由美
脚本 草野翔吾、山田麻以、山本透
撮影 飯田佳之
音楽 エバン・コール
主題歌 androp
出演 高橋一生、川口春奈、浜野謙太、中村優子、川栄李奈、古舘佑太郎、ミッキー・カーチス

 

face「物語はその恋を見つけたときからはじまる……」

またぞろインチキタイムトラベル恋愛映画かい……と思ってみたら、なんと原作:松尾由美! 久しぶりに名前見たけど、こんな作品書いてたのか……実に2007年に出版された本が、2016年にTSUTAYA店員が絶版書籍の中から選ぶ「オススメしたい本」に選ばれ、双葉社からTSUTAYA復刊プロデュース文庫として復刊されたのだという。それで双葉社が過去の成功体験にのっとり、映画化企画に動いたというわけなのかな? そういうわけで見ながら松尾由美原作らしいところを探していたのだが、平野(高橋一生)がタイムトラベル薀蓄を開陳するあたりがちょっぴりSFオタク臭かったでしょうか。

 

 

旅行会社勤務の北村志織(川口春奈)は、アーティストばかりが住んでいるマンション「ゴドー荘」に越してくる。気さくな住人たちとすぐ仲良くなるが、隣に住む平野進(高橋一生)だけはうちとけず、すぐに部屋にひっこんでしまう。オーナー(ミッキー・カーチス)にたずねると「彼は……卵だな」の返事。そう、平野は作家の卵として処女作執筆中の身だったのである。
その夜、9時ちょうどになったころ、壁に空いたエアコン用の通気口から声が聞こえてくる。

「北村志織さん! 北村志織さん!」
「……はい?」
「奇跡だ! つながった!」

接続が悪くてときどきかすれる声、「そちらは今、何年ですか?」

「? ええと2018年9月14日だけど?」
「こちらは2019年です。ぼくは一年先から話しかけているんです」

そんなことを言われても信じられるわけがないが、声は「明日は雹が降ります」と予言し、その通りに雹が降る。さらにはプロ野球選手とアイドルの結婚とか、天才少年棋士がタイトルを獲得するとか、次々に未来の出来事を的中させるので信じないわけにはいかない。で、あなたは誰?

 

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tags: androp タイムトラベル ミッキー・カーチス 中村優子 古舘佑太郎 山本透 山田麻以 川口春奈 川栄李奈 松尾由美 浜野謙太 草野翔吾 飯田佳之 高橋一生

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