『クロノス・ジョウンターの伝説』 またもやってきたタイムトラベル恋愛映画。本当に日本人はタイムトラベルと恋愛が好きである
→公式サイトより
監督 蜂須賀健太郎
原作 梶尾真治
脚本 太田龍馬、蜂須賀健太郎
企画・プロデュース 大橋孝史
撮影監修 高間賢治
撮影 古屋幸一
音楽 YU NAMIKOSHI
出演 下野紘、井桁弘恵、尾崎右宗
またもやってきたタイムトラベル恋愛映画。原作は梶尾真治の短編小説である。本当に日本人はタイムトラベルと恋愛が好きである。梶尾真治と言えば大ヒット作『黄泉がえり』の原作者なわけで、利には敏いことで毎度おなじみ大橋孝史が映画化に乗り出したということらしい。問題はこれ原作がオムニバス短編集の一編だということで、そもそも元の話が短いのでやたらと引き伸ばしにかかる、これがひとつ。無駄な尺稼ぎのカットがやたらと目立つのである。もうひとつは短編小説だと説明しないですっ飛ばしてもいいようなことが、長編映画になるといちいち引っかかってくる問題。やたらとエモく引き伸ばされる不条理恋愛映画というのがですね……
さて、そういうわけで話のはじまりは2058年、博物館に忍びこんだ男が逮捕され、館長から事情聴取される。男は前世紀に開発され、無用物として放棄された機械クロノス・ジョウンターに固執している男、事情を聞かれて話しはじめる。それは1995年のことだった……これ、原作はおそらくこの過去から来た男の語りだけで物語が説明されるとおぼしく、それならいろんな意味で運命と恋に狂ってしまった男がする現実とも法螺ともつかない話として成り立たないこともないんだが、こんな客観的なストーリーにしちゃだめなんだよ。
その男吹原和彦(下野紘)は住島重工の研究所で働く地味な技術者。仕事以外の唯一の潤いは会社への往復の道にある花屋で働く花売り娘蕗来美子(井桁弘恵)の存在であった。といっても告白するでもなくただ柱の陰から見てるだけのキモい恋。そんなある日、会社が開発中の新発明「クロノス・ジョウンター」のお披露目がおこなわれる。これは物体を過去に送り込めるというノーベル賞が十個くらい取れる発明である(送る場所もコントロールできるようなので、使いみちはまず間違いなく軍事用途ですな)。そんなものを民間企業が秘密裏に開発して体育館でお披露目しているという驚き。主任研究員が物体を過去に送りこむデモンストレーションとして、機械にボールペンを挟む。
「10分前の過去に送ります!」
ぶいーんと音をたてて作動する機械。ボールペンは消える。
「成功しました!」
「消えるのはいいんだが、どこに行ったんだ?」
もっともな疑問であるが、それも解決してなかったのかい! この物語の設定でいくと、10分前くらいにこの機械の前に空中からボールペンがあらわれて落ちる場面があったはずなのだが、誰も気づかなかったようである。12分後、機械の中にボールペンが戻ってくる。
「なぜ12分後なんだ……?」
なんの理論もなくてただトライアル&エラーの主任研究員。どういう時間理論なのかこれは。次にはアマガエルとストップウォッチを過去に送る。10分前に飛ばされたカエル、15分後に帰ってくる。ストップウォッチの経過時間が実時間とずれているのが過去に行った証明だ! 過去に行くとその時間+αだけ未来に飛ばされてしまうというのがこのタイムトラベルのルールであるらしい。しかし、それくらいはタイムマシン作る前にわかっておけと……
(残り 1856文字/全文: 3303文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
タグマ!アカウントでログイン
tags: YU NAMIKOSHI タイムトラベル 下野紘 井桁弘恵 古屋幸一 大橋孝史 太田龍馬 尾崎右宗 梶尾真治 蜂須賀健太郎 高間賢治
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ