『マチネの終わりに』 原作平野啓一郎、芥川賞作家のメロドラマである。え、それってこんな話なんですか?いったい何をしたいんだ!
→公式サイトより
『マチネの終わりに』
監督 西谷弘
原作 平野啓一郎
脚本 井上由美子
撮影 重森豊太郎
音楽 菅野祐悟
出演 福山雅治、石田ゆり子、伊勢谷友介、桜井ユキ、木南晴夏、風吹ジュン、板谷由夏、古谷一行
原作平野啓一郎、芥川賞作家のメロドラマである。え、それってこんな話なんですか? いやいかなる文学作品でもあらすじだけにするとバカバカしくなる、というのは往々にしてある話なんだが、それにしたってこれはひどい。これ、二人のすれ違いの最大唯一の原因というのがサイコパス女が送った偽メール一通なのだ。そんなひどい話あるのか? あるのである。二人の出会いからすれ違いまで何ひとつ説得力のない二時間で、よくもまあこんな話作ろうと思った、と逆に感心してしまった。ありえないからこそメロドラマとしての純度が高まるとでも言うつもりだろうか? まあ福山が演じるキャラクターが世界的な人気を誇るクラシック・ギターの天才、という時点でどういう顔して見ればいいのか……ともかく六年のあいだ三回しか直接会ってない二人が東京、パリ、ニューヨークと世界をまたにかけて演じるすれ違いメロドラマ。テレビの人って本当に海外ロケが好きだよねえ。海外に行くだけで映画になると思ってるとかですかね……
今から六年前、二〇一三年十一月のことだった。天才ギタリスト蒔野聡史(福山雅治)はコンサート後、真っ暗な控室で苦悩していた。蒔野、コンサート中にも突然暗転して真っ暗な中に取り残されるなどの怪奇現象を経験している。あ、これはもちろん心象風景で、どうやら蒔野はスランプの真っ最中なのである。コンサートのあとも引きこもって誰とも会おうとしないのだが、最後にレコード会社の担当是永(板谷由夏)とその友人小峰洋子(石田ゆり子)が来ると、顔を出して話に乗ってくる美人に弱い男だ。
「コンサートの途中、どこか取り残されてしまったような感じがして……」と彼の心象を的確に見抜く洋子に興味を引かれた蒔野は息を吸うようにナンパするが、
「だめよ、この人イエルコ・ソリッチの娘なんだから」と是永に牽制される。
「え……あの映画監督の?」
「そうです。わたし、ニューヨークのウェズレー・ホールでやったあなたのデビュー・コンサートで『幸福の硬貨』のテーマ・ソングを演奏するのを聞いて嫉妬したんです」
誰もが知っている天才映画監督(ユーゴ生まれのビクトル・エリセというところか)の娘なので軽々しいナンパは許さないらしい。洋子はパリ在住で某通信社の記者だという。まあまったく女性記者には見えない石田ゆり子ですが、フランス語はちゃんとしてました。あ、当たり前だけど福山のギターもちゃんとしてた。
すかさず洋子を打ち上げに誘った蒔野、
「過去が未来を変えるとみんな思っているけれど、未来が過去を変えているんだよ……未来に起こる出来事で、過去の出来事の意味は変わるんだ」
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