『Documentary of AKB48 No Flower Without Rain 少女たちは涙の後に何を見る?』 残酷ショーは終わらない!-柳下毅一郎、AKB映画を観る!
『Documentary of AKB48 No Flower Without Rain 少女たちは涙の後に何を見る?』
(東宝 2013)
企画 秋元康
監督 高橋栄樹
ナレーション 伊藤歩
出演 AKB48とその派生グループのみなさん、元AKB48のみなさん
「何を見る?」って坊主頭を見るんだろーが!
峯岸坊主問題で大いに話題のAKB48映画最新作。一説には本作のプロモーションのために秋元康が仕掛けたという噂さえあるくらいだ。実際新宿バルト9では深夜まで6回まわしの大ヒット……と思いきや公開二日目に見にいったにもかかわらず上映しているのは座席数80のスクリーン7だった(翌日からは大きなスクリーンに移っていたので、それなりにヒットはしているのだろうか)。
とはいえもともとAKB48にはなんの興味もなく、顔も名前もほとんどわからないぼくでさえもが峯岸みなみの顔と名前はしっかりインプットされたので、ある意味プロモーション的には成功しているのかもしれない。問題は髪が伸びたら顔がわかんなくなってしまうということだが。
本作はAKBドキュメンタリー第三弾。前作『Show Must Go On ~少女たちは傷つきながら夢を見る』では埼玉ドーム公演をクライマックスに、次から次へとAKBメンバーが過呼吸で倒れてゆく残酷ショーを見せつけ、我々AKB初心者に大きなショックを与えた。
ともかく過度の緊張とハードなダンスのおかげで全員体力的にもボロボロ。一曲歌うと過呼吸で前田敦子がぶっ倒れる。前田が立ち直ると別なのがぶっ倒れる。過呼吸で誰もがダメだ、と思ったマエアツが時間ギリギリで立ちあがり満面の笑顔で歌いはじめる場面はファンのあいだでは名場面として語り継がれているという。だがそれは誰が見ても残酷きわまりない見世物である。ぼくが連想したのは『ひとりぼっちの青春』 のマラソン・ダンスだった。
AKBがこんな残酷劇になってしまったのは、もちろん投票制度のせいである。AKB総選挙についてはファンが注ぎこむお金が騒がれることが多いのだが、もちろん問題はそっちではない。投票で順位をつけることでファンと「推しメン」の絆は強まるのだが、そのかわりにメンバー同士が分断されてしまうのだ。だからメンバー同士の絆で切り抜ける、というわけにもいかず、個々のメンバーは孤独にプレッシャーと闘わなければならない。そのありさまを目の当たりにして、「これはいずれ死人が出るわ……」の思いを抱かずにいられなかった。さて、実際に自殺に近い自傷行為が発生してしまった直後、公開された映画はいったいどんなものだったのか。
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