柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『縁側ラヴァーズ』 舞台挨拶によって俳優のファンを劇場に集める2.5次元系イケメン映画だが、コロナ禍でリクープできず一気に死滅さえ・・・

公式サイトより

縁側ラヴァーズ

監督・脚本 今野恭成
撮影 葛西幸祐
音楽 pachi
出演 松田岳、三山凌輝、笹翼、秋葉友佑、岡野陽一、咲希、樋谷怜穏、温水洋一

監督・脚本(今野恭成)、主演(岡野陽一、松田岳)の座組が『岡野教授』シリーズそのままで、すなわちまたぞろ2.5次元系俳優を集めてイケメンたちがイチャイチャする映画である。今回はゲスト出演的に登場する温水洋一すらゲイで男性と同棲中という設定で、男しか出てこない(岡野の娘として少女が一人だけ登場する)徹底ぶり。ただ、問題はリクープ(回収)のほうである。この手の2.5次元系イケメン映画では、舞台挨拶によって俳優のファンを劇場に集めるのが常道なのだが、コロナ禍のせいで舞台挨拶が困難な現状ではほぼ回収のすべがない。本作では上映前にイケメンたちのメッセージビデオがついていたが焼け石に水。正直、現今の情勢でいちばん苦しいのはこの手の2.5次元系映画だろう。去年から今年にかけて絶頂を迎えるかに見えたこのジャンルだが、思わぬ障害の発生で、一気に死滅さえ考えられる。コロナ禍が映画界にもたらした最初のインパクトはここなのかもしれない。

 

 

海に近い田舎町のどこか。佐々木(松田岳)と多井(三山凌輝)は東京から引っ越してきた。ブラック企業でエンジニアとして働いていた多井は体をこわして退職、友人佐々木と一緒に静養をかねて田舎に引っ越すことにしたのである。大家の岡野(岡野陽一)はいいかげんな性格で、隣人の藤原(温水洋一)とその恋人島田(樋谷怜穏)ともども、なにかあると(なくとも)酒をもって集まってきて昼から酒盛りをしている。根は真面目な多井だけはいまいちそのノリになじめないまま……

ところで多井はこれからは「エンジニアではなくインベンター」と発明家にジョブチェンジし、自前のハードウェアまで製作している。「スマートウィンク」と名づけたガジェットは、眼鏡型で片目に映像を投影するスマートグラス式VRデバイスなのだが、耳から脳波を計測して「見たいと思っているものを見せてくれる」。なんと脳を刺激して本人がいちばん見たがっている記憶を再生してくれるデバイスだというのだ。すごいこれは売れる。というかこの人ノーベル賞くらい楽勝でもらえる大発明してない? この時点ですでに「田舎でのんびり」みたいな前提がすべて崩れてしまっているんですがどういうことなんですかねえ。

 

 

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tags: 2.5次元映画 pachi 三山凌輝 今野恭成 咲希 岡野陽一 松田岳 樋谷怜穏 温水洋一 秋葉友佑 笹翼 葛西幸祐

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