柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『グレーゾーン』 大川宏洋あらため宏洋、言わずとしれた大川隆法総裁の長男にしてYoutuber。幸福の科学パワーを使わず勝負して、その結果は……?

公式サイトより

グレーゾーン

監督・脚本・企画・統括・主演 宏洋
撮影 ふじもと光明
音楽 サニーミュージック
主題歌 ウタエル
出演 宏洋、西原愛夏、青山ひかる、黒条奏斗、和田奈々、浪花ゆうじ、絹張慶、仁科克基、中村ゆうじ、まっすう、えらいてんちょう

大川宏洋あらため宏洋、言わずとしれた大川隆法総裁の長男で、幸福の科学映画戦略の中心人物でありながら幸福の科学を離脱(破門)してYouTuberに転身、幸福の科学の内部情報暴露でも話題のオタク息子である。幸福の科学在籍時には俳優、脚本、製作その他で八面六臂の大活躍。再三指摘しているように、大川宏洋在籍時と離脱後の幸福の科学映画にははっきりと違いがあり、あきらかに在籍時のほうが面白かった。エンタテインメント志向と、いくぶんかでも大川隆法の教えを相対化しようとする姿勢ゆえだろう。さて、その宏洋、幸福の科学パワーを使わないところで勝負してみたいという思いがあったのかどうか、監督・主演の新作を発表した。製作は宏洋企画室、つまり自主制作である。なんでも私費8000万円を投じて作ったのだという。というわけで製作監督脚本主演のすべてをこなし、彼のヴィジョンを余すところなく実現すべく試みた。で、その結果は……?

……帰っていいですか? いやまあおそらく大川宏洋の映画をいちばんよく見ている映画評論家として申し上げますが、正直映画として論じる以前の問題というか、プロのスタッフとハッピーサイエンスマネー抜きだとただの素人YouTuberの映画ごっこに過ぎないと言うべきか。何よりすごいのが宏洋の演技で、前半軽い三枚目のダメ男をやってるときは等身大の宏洋としてまあ見てられるのだが、彼が一転邪悪な正体をあらわす場面! 目をむいて首をちょっと傾けて三白眼で力みかえってセリフを言うのだが、こんな演技はじめて見たよ! いやーいいものを見せていただいた。じゃあ、帰っていいかな……

 

 

さて、物語がはじまると廃工場で縛られ、白川組の面々から拷問されている灰原龍(宏洋)。「アル中、無職、パチンカス」の三拍子揃った灰原、借金が返せなくていたぶられていたという。そこを通りがかったのが白川組と対立する黒崎一家の黒崎一葉(西原愛夏)。さっそうと白川組を叩きのめし、救けられた灰原はそのまま使用人として黒崎一家に転がりこむ。これ、白川組は全員白づくめの衣装で、黒崎一家は全員黒づくめで、で宏洋の役名が「灰原」で、頭は銀色のつもりなんだろうけど半白髪にしか見えない変な色に染めているという……わかりやすくていいですね!

 

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