『犬部!』 こういう映画に出てくる人って、どいつもこいつもエキセントリック過ぎて、犬を救ってる前に人間のほうをなんとかしろよ!
→公式サイトより
『犬部!』
監督 篠原哲雄
原案 片野ゆか
脚本 山田あかね
撮影 鶴崎直樹
音楽 GEN
出演 林遣都、中川大志、大原櫻子、浅香航大、田辺桃子、安藤玉恵、しゅはまはるみ、田中麗奈、酒向芳、螢雪次朗、岩松了
まずは予告編を見ていただきたい。
予告編を見ると、大学で「捨てられた動物をぜんぶ救う!」と誓って「犬部」を作った動物愛護青年が、いつのまにかおかしくなって警察に逮捕されてしまう。なんでこんなことになってしまったのか……と昔の仲間たちが過去をたどる……みたいな話に見えるんだが、実はまったくそうじゃない! 犬が好きすぎておかしくなってしまう人は出てくるんだけど、それは主人公ではないのだった。というかですね、こういう映画に出てくる人ってどいつもこいつもエキセントリック過ぎて、犬を救ってる前に人間のほうをなんとかしろよ!と言いたくなるんだよ。実際、人間がダメだったら、結局は動物を救うこともできないのではなかろうか。
原作は『北里大学獣医学部 犬部!』。北里大学獣医学部在学中に、保健所で殺処分される犬や猫を一匹でも減らそうと「犬部」を結成した学生にまつわる実話だそうである。
二〇〇三年、十和田大学獣医学部の学生花井颯太(林遣都)は、「外科実習」に使用される予定だった実験犬を保護したことがきっかけで「犬部」を結成する。わけへだてなくすべての動物を救う!という颯太の強引で熱狂的な空想的ユートピア思想に共鳴し、親友の同級生柴崎涼介(中川大志)、後輩の猫好き佐備川よしみ(大原櫻子)、実験犬を逃した秋田智彦(浅香航大)らと「犬部」を結成する。
二〇一九年晩秋、颯太は東京で動物病院を開業、仕事のかたわら野良猫の去勢や不妊手術を無償で引き受け、看護師から「一人でなんでも引き受けようとしないでください! 先生が倒れたらどうするんですか!」と怒られている。そんなある日、女子大生川瀬美香(田辺桃子)から、多くの子犬をかかえてまともに世話もできなくなっているペットショップドリームのことを聞かされる。店を訪ねた颯太だったが……
父の動物病院で働いている秋田は、たまたまつけていたテレビから颯太逮捕のニュースが流れてきて驚愕する。颯太はドリームに侵入、二百万円相当の子犬を盗んだとして窃盗で逮捕されたのだ。慌てて警察にかけつけた秋田とよしみは、釈放された颯太から事情を聞く。颯太はペットショップ店主(螢雪次朗)から犬を無償で引き取り、不妊手術をする約束を取りつけたのだが、犬を引き取ったところでいきなり警察を連れた店主が乗り込んできて、泥棒だと告発したのだと明かす。
「なにそれ、全然悪くないじゃない」
ちなみにこの場面は回想シーンになるのだが、この映画、さしたる理由もなく時間がぽんぽん飛びすぎる。語りの都合だけで平気で時間をとばしてなんのフォローもない。加えて場所も必然性なく移動し、舞台は青森と東京を行ったり来たりする。論理ではなく感情のつながりだけで時空間が変化する。まあその意味では表現主義的だと言えないこともないか?
「なんで命に所有権があるんだよ!」などと学生時代と変わらない意味不明のたわごとを言ってる颯太。なおもドリームに戻ろうとするので全員に止められるが、「俺を誰だと思ってるんだ」と歯牙にもかけない。いやきみがどういう人間か知ってるからみんな止めてるんでしょうが!
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