柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『僕と彼女とラリーと』 ラリージャパン2021に合わせたもののコロナ禍で中止!ラリーの面白さはひとつも伝わってこなかったんで、そこらへんですかねー

公式サイトより

僕と彼女とラリーと

監督・脚本 塚本連平
撮影 今井哲郎
音楽 吉岡聖治
主題歌 加藤ミリヤ
出演 森崎ウィン、深川麻衣、西村まさ彦、竹内力、佐藤隆太、田中俊介、小林きな子、よしこ(ガンバレルーヤ)、赤間麻里子、大久保運

 

愛知県豊田市発! なんとRIKIプロジェクト制作である。と言っても竹内力が主体になっているわけではなく、名古屋のテレビ局メ~テレ(名古屋テレビ)が2021年11月に開催予定だった世界ラリー選手権ラリージャパン2021に合わせてラリーをネタに映画を企画したものらしい。しかるに肝心のラリージャパンはコロナ禍の中で中止! というわけでこれまたオリンピック便乗映画同様コロナ禍で行き先を失ってしまった父なし子映画となってしまったのだった。特に世界のトヨタのバックアップを受けている様子はなさそうで、いろいろ想像させられてしまう……

 

 

東京で役者をめざしているがいまいち芽が出ない北村大河(森崎ウィン)、父(西村まさ彦)から様子をうかがう電話がかかってきても「何親みたいなこと言ってるんだよ。あんたのことは父親だなんて思ってないから」とにべもない。ところがそれからしばらくして幼馴染美帆(深川麻衣)から「お父さんがなくなった」と電話がかかってくる。驚いて豊田市の片田舎に帰る大河。もともと夢に生きて家庭を蔑ろにしていた父親に反発していたのだが、兄(佐藤隆太)と一緒に遺品の整理をするうちに実はその夢を通じて若くして亡くなった母(赤間麻里子)とも心が通じ合っていたことを知る……というわけであっという間に父を赦してしまうのだった。いや冒頭であんなに激しい言葉で罵ってたのはなんだったのよ。

で、その父が家庭を蔑ろにして打ち込んでいたのが実家の隣にある「北村ワークス」という自動車修理工場。対人恐怖症の経理女性とか前科者の若者とかを雇い、ほそぼそと運営していたのだが、オンボロ工場になぜか一台だけピカピカのラリーカーが置いてある。他に行くところもないはぐれものの社員たちは、「どうか続けさせてください」と頭を下げるが、エリート銀行員の兄は冷徹に「続けても採算は取れないので潰します」と言い放つ。だが、父の思いを知った大河は、「三ヶ月だけやらせてくれ」と兄に頭を下げ、まるっきりの素人であるにもかかわらず、北村ワークスの再建に乗り出すのだった……というわけで、はい、例によって都会で挫折したアラサーが田舎に帰る話でございました。映画が渋谷の街頭風景からはじまるところからここまで流れるような予定調和っぷり。

 

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tags: ご当地映画 よしこ ガンバレルーヤ 今井哲郎 佐藤隆太 加藤ミリヤ 吉岡聖治 地方映画 塚本連平 大久保運 小林きな子 森崎ウィン 深川麻衣 田中俊介 竹内力 西村まさ彦 豊田市 赤間麻里子

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