柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『泣いて笑って豚ホルモン Legend of Horumon in Gunma』 群馬地方映画のチャンピオンの新作。演者はほぼ全員素人。壮絶な棒読み演技が繰りひろげられるのも「まち映画的表現」

公式サイトより

泣いて笑って豚ホルモン Legend of Horumon in Gunma

監督・脚本・編集 藤橋誠
撮影監督 中島元気
音楽監督 香川誠
出演 秋山紗良、千容植、藤咲華、大野友、木村路留

 

群馬まち映画の雄、藤橋誠待望の新作は商都高崎が舞台である。藤橋は群馬県を中心に市町村をへめぐって「まち映画」を30本以上作っている群馬地方映画のチャンピオン。なかなか中央に出て来ない「まだ見ぬ強豪」として知られる藤橋誠だが、本作のネタはホルモン焼き。高崎こそ豚ホルモン発祥の地である、というなかなか大胆な説を唱える映画である。なお、まち映画七原則とそこから生み出される摩訶不思議な「まち映画的表現」についてはコウとチョウゴロウの夏レビュウを参照のこと。今回、生CMタイムはなかったが、映画上映前に協賛企業のCMが大胆に付属しておりました。出演者はほぼ全員素人、関係企業の従業員なんかもいて、壮絶な棒読み演技が繰りひろげられるのは「まち映画」にはありがちなこと。

 

 

高崎発のグルメ情報誌〈食べるん〉創刊号が無事完成! 編集部一同は焼肉屋で打ち上げをしている。編集部員の美濃ハルミ(秋山紗良)は名は体をあらわすちょっぴりぽっちゃり体型のホルモンの化身だけあって、バクバクとモツ焼きを食っている。ところがそれが豚モツだと知った大阪出身のカメラマンが「ホルモンは牛やろ。豚なんざ……そもそもホルモン焼きは大阪で生まれたもんで、大阪が本場や!」と偏見むき出しで馬鹿にする。それを聞いていた編集長、「じゃあ、次号は高崎ホルモンのルーツを探る特集にしましょう!」と即決。翌日、ホルモン女が先輩に、「わたしなんせ名前がミノ・ハラミですから!」と意味不明のホルモン自慢をしているところ、空が一転にわかにかき曇り季節外れの雷が落ちる……

舞台変わって(ここから白黒映像に)昭和30年代の高崎。もちろんセットなど作る金はないので、昭和の建物を探してきて、できるだけ昭和以外のものが入らないようにしての撮影。それはなかなか頑張っているんだけど、残念ながら小道具までは手がまわらないので、キッチンとかはたいそう寂しい状態に……登場するのは妻と娘を連れてここ高崎に流れてきた井野(千容植)である。なんでも名古屋からニシン漁が儲かると聞いてはるばる北海道まででかけたが、ニシンの不漁で一文無しになり、しょうがないので名古屋に帰ろうと列車に乗ったはいいが、高崎まで着いたところで運賃が尽きてとりあえず降りたのだという。そんないい加減な話あるか!? すでに妻も娘も絶望しかない顔をしている。そんな状態でふらふら高崎を歩いていたら、なにやら中華料理店で揉めている娘がいる。

「ラーメンと餃子で90円――ラーメンが50円で餃子が40円っていうから出したんじゃない」
「何言ってるんだ、こんなおもちゃで騙そうとして――この世に500円玉なんてねえよ!」

 それがもちろんホルモン娘ハルミである。

 

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