柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ガヨとカルマンテスの日々』 高城剛長編映画初監督作品!いかにも高城らしいぶち上げぶりだが、中身については……

 

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ガヨとカルマンテスの日々

監督・脚本・撮影 高城剛
原作 芥川龍之介
出演 アリシア・エチェバリア、デニース・ラモス

 

高城剛長編映画初監督作品! 今の若い人に高城剛が沢尻エリカの元旦那という以外、どのように知られているのかよくわからないのだが、個人的には90年代の怪人、いや怪男児という印象で、いうことやることどこまで本当なのかはよくわからないが、その現実歪曲フィールドも才能のうちとして楽しんでいた。とっくに映画の一本や二本は撮っていると思っていた。『バナナチップス・ラブ』とかあるわけで……ただ、最近はそういう芸風は好まれないようなんで、派手にぶちあげるかわりに地道にメルマガなどやって読者に海外情報を伝えているらしい……というのは知っていた。そこへもってきていきなり映画である。なんと自社製作ということでつまりは自主映画作品。それもキューバ・ロケで俳優は全員現地調達、言葉はすべてスペイン語で日本語字幕つき。ほぼ完全にキューバ映画と言ってもいいかもしれない。

なんでもSONY α1を10台用意していっせいに回し、ワンシーンワンテイク(ワンカット、ではない!)で撮ってしまい、わずか14日間で撮影を終えたとか。いかにも高城らしいぶち上げぶりである。「映画の民主化」として語っている映画解放のひとつの極致なのだろうが、いかにも高城剛な個人映画。『バナナチップス・ラブ』と同じじゃねーか! と90年代を覚えている人なら言うだろう。なお、映画の上映には、カラー写真多数使用の300ページ以上ある本がプレゼントされるというゴージャスさ。この本、機材のほか高城剛本人が撮影中使用していた旅行用品/アパレルを紹介するNextraveler の商品カタログともなっている。いわばこの映画もNextravelerのプロモーション・フィルムであり、高城本人のライフスタイルを売りこむためのひとつの要素であるのだろう。だから、映画を映画単体で評価しても、何もわからないというところはあるのだが……

 

 

舞台はカリブ海に浮かぶ某国。「幸せの配達人」と自称する楽天的な小悪党ルイス(デニース・ラモス)と恋人マリアがサンタクロースとトナカイのコスプレで浮かれながら歩いている。ルイスが手に持っていたプレゼントの包みをフードスタンドの店頭に立っているクリスマスツリーの下に放りこむ。と、その直後、プレゼントが爆発して死傷者多数の大惨事。テレビでは政府の進める国営企業の民営化に反対する連続爆破テロが報じられ、関与が疑われた新興宗教団体「三千世界の仔羊たち」が追求されている。はたして……

 

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tags: アリシア・エチェバリア デニース・ラモス 芥川龍之介 高城剛

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