柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『メグ・ライアンの男と女の取扱説明書』 (2009)-「ストックホルム症候群って知ってる?」…この恐怖 [♪akiraのスットコ映画の夕べ]

メグ・ライアンの男と女の取扱説明書 [DVD]

 

『メグ・ライアンの男と女の取扱説明書』 (2009/米)※日本劇場未公開

監督 : シェリル・ハインズ
出演 : メグ・ライアン、ティモシー・ハットン

結婚生活13年目の弁護士ルイーズ(メグ・ライアン)は、週末を夫とゆっくり過ごそうと予定の前日に田舎の別荘に向かう。一方夫のイアン(ティモシー・ハットン)は妻が来るのは翌日と思っているので、自分より20歳も若い浮気相手サラを迎えようと、両手一杯の花で別荘を飾っていた。「離婚しよう」とメモパッドに書置きを綴っていたその時、ルイーズがやってくる。ロマンティックに飾られた別荘を見て感動し熱烈に迫るルイーズに、あっさりと「他に好きな女性が出来た。別れよう。明日から彼女とパリに行くから、そこでプロポーズするつもりだ。」と告げるイアン。

なんじゃこの男は!と普通なら誰しも妻の味方をしそうなところだけど、そこはさすがに“ラブコメの女王”をこじらせた女! 夫の冷たい告白にも全く動じず、

妻 「そんなことしないわよ。あなたは私を愛してるんだから」
夫 「だからもう君なんかどうでもいいんだよ!」
妻 「いいえ、週末ゆっくり話し合えば元通りになるから大丈夫」

売りの笑顔で自信たっぷりにニンマリと微笑むルイーズ。慣れてるのか(?)、さっさと荷造りを始めるイアン。余裕こいてたルイーズも遂にブチ切れ!

「あなたを愛してるのよ! 離婚する気なんて全然無いわ!! 子無しで離婚!? 同じバツイチ同士の40代女子会で傷を舐めあうなんてまっぴら! アイスクリーム抱えて愚痴こぼすデブになるなんて冗談じゃないわ!!!」

世の中のアラフォー全てを敵に回すようなセリフを吐いたルイーズを後にし別荘を出ようとしたイアンの頭に、飛んで来た植木鉢が直撃!

気が付いたら椅子にダクトテープで縛り付けられていたイアン。「ちょっと落ち着いて話し合いましょうよ~ウフフ」とニンマリ笑顔のルイーズに対し罵詈雑言を投げつけるが全く効果無し。「拉致だぞ!警察に突き出してやる!これでお前の弁護士生命はお終いだ!」というイアンに「離婚するより刑務所に入った方がマシ」という狂人の理論。仕方なく心にも無い愛の言葉を畳みかけるが、弄ばれるばかり。そこに天の助けか、落ち合う予定のサラ(クリステン・ベル)がやってくる。イアンの口を塞ぎ何食わぬ顔で出迎えたルイーザは、夫の不倫を許すさも理解のある妻の振りをし「離婚届の前に一日だけ2人きりに」と同情を買いサラを追い返す。

望みを絶たれたイアンは最後の手段と「トイレに行かせてくれ。本当に僕が悪かった。愛してるのは君だけだ。絶対逃げたりしない。今なら冗談で済むだろう?」、どう見ても棒読みなんだけど。「そうよね、私も悪かったわ~」とルイーズがのほほんと自由にした途端、当然ながらイアンが反撃。電話線まで切っていた妻を投げ飛ばし、「お前みたいな年くったブスなんか願い下げなんだよ!」とこれまた政治的にアレな感じで反撃したが、高給取りで機械の故障も直せてベンチプレスもずっと回数が多い妻(夫の愚痴)には勝てるはずが無く、またもやブラックアウト。

今度は気づいたらバスルーム。しかもパンツを下した状態で便器にぐるぐる巻き!!「これならトイレの心配も無いし~(ニンマリ)」と優勢なルイーズは、「会社の受付の女? ロシア文学が好きって、だからあなた急に『カラマーゾフの兄弟』なんて読み始めたのね」とネチネチ攻撃。どんなに言い返されても元サヤを主張し、挙げ句の果て思い切り嬉しそうに「ストックホルム症候群って知ってる?」…この恐怖。

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tags: シェリル・ハインズ ティモシー・ハットン メグ・ライアン 洋画

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