柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『世界の終わりから』 「おまえらに真のセカイ系を見せてやる!」というタマシイの叫びが聞こえてくる紀里谷和明監督の絶唱作にして、監督引退作。

 

公式サイトより

世界の終わりから

監督・原作・脚本 紀里谷和明
撮影 神戸千木
音楽 八木信基
出演 伊東蒼、毎熊克哉、朝比奈彩、増田光桜、岩井俊二、市川由衣、又吉直樹、冨永愛、高橋克典、北村一輝、夏木マリ、阿見201、柴崎楓雅

「世界の車窓から」ではなくて「世界の終わりから」! キリキリこと紀里谷和明監督のついにやってきた監督引退作、いや、『シン・仮面ライダー』に対して『CASSHERN/キャシャーン』を引き合いに出す評を見て、「……なに言ってるんだ?」などと思っていたが、ぼくが間違っていた。「まがいもんのセカイ系っぽさで満足してるんじゃねえ! おまえらに真のセカイ系を見せてやる!」というタマシイの叫びが聞こえてくるキリキリの絶唱作。うん、これならキリキリが『シン・仮面ライダー』を監督したほうがよかったかもしれぬ。キリキリ、おまえこそが真のショッカー(愛の秘密結社)、おまえがナンバーワンだ……

 

 

映画がはじまると宇宙。そして地球。モノクロ画面で描かれるのは謎のサムライ軍団に村を焼き討ちにされ、両親を殺された少女(村は日本の農家なのだが、少女の衣装は中央アジア風だったりする謎風味)。それは夢であった。その夢を見ているのが女子高生志門ハナ(伊東蒼)である。両親を交通事故で亡くしたハナ、今度は祖母も亡くなって天涯孤独の身である。高校を出たら専門学校に通ってメイクアップアーティストになるのが夢で、アルバイトをしながら学費を稼いでいたのだが、その夢ももう諦めねばならない。しかも学校では同級生たちにイジメられて夢も希望もない。そんな彼女の元をいきなり訪れるのが警視庁警備局を名乗る男江崎(毎熊克哉)と佐伯(朝比奈彩)。「なんなら施設に入ってもらってもいいんだよ」と脅迫してくる二人から「夢は見てないか?」といきなり詰問されるハナ。最初は知らないと言っているが、風呂に入っているといきなりモノクロ夢世界に連れて行かれる。

血に飢えたサムライから追われたハナ、あわやのところを助けたのは中央アジア風ファッションの少女ユキ(増田光桜)。老婆(夏木マリ)が待ち受ける洞窟に案内されたハナ。老婆は洞窟の天井にびっしり描かれた謎の文字を示し、「あなたが来ることはこの予言でわかっていた」という。そしてハナを連れてある場所まで手紙を届けてくれ、と頼む。自分はこのままサムライたちに殺されるだろう。この完璧なマクガフィンとともに目覚めたハナだがその体には夢で受けた矢傷がついている。そして学校で先生や同級生からいじめられていると、江崎たちが乗り込んできて強引にハナを連れ出してしまう。そのまま連れて行かれた先は秘密基地で、そこには髪をボルチモア風に盛った老嬢(夏木マリ二役)が待っている。

「あなたのことはみんなわかっているのよ。夢を見たことがわかったから、あなたをここへ呼んだの」

 

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