柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』 わからない。何がわからないって犯人の狙いがなにひとつわからない。これほど難解な映画を見たのも久しぶりである。

公式サイトより

映画ネメシス 黄金螺旋の謎

監督 入江悠
脚本 秦建日子
撮影 冨永健二
音楽 横山克
出演 広瀬すず、櫻井翔、勝地涼、中村蒼、富田望生、大島優子、上田竜也、奥平大兼、加藤諒、南野陽子、橋本環奈、真木よう子、魔裟斗、栄信、駒木根葵汰、笹野高史、佐藤浩市、江口洋介

 

わからない。これほど難解な映画を見たのも久しぶりである。わからなすぎる映画を見ると、つい「ゴダールより難解」とか言ってしまうのだが、これまたゴダールよりも難解映画。わからないのはテレビドラマの劇場版で元のドラマを見ていないので知らないキャラクターが知らないストーリーを演じているから? その要素はもちろんあって、どうでもいいキャラクターがただ顔見世のためだけに次々に出てきてこちらを極度な混乱に落としこむ点では凡百の映画をはるかに押しのけて圧倒的だが、それすらも大した問題ではない。何がわからないって犯人の狙いがなにひとつわからない。底抜けミステリってのもよくあるけど、ここまで手間ひまかけて無意味なことをやってる犯人ってのもちょっといないのでは。誰がこんなもんでよかんべと思って映画作ったのか、本当に知りたいよ。

 

 

さて、「ポンコツ探偵事務所には天才の探偵助手がいた」というわけで、還暦の社長栗田(江口洋介)の下で働くポンコツ探偵風真(櫻井翔)とその天才助手アンナ(広瀬すず)は横浜の某所のビルの屋上のペントハウスに「ネメシス探偵社」を構えている。これ、TVシリーズを見てないので人間関係がさっぱりわからないのだが、江口洋介はショーケンにとっての岸田今日子のような存在だったりするのだろうか? ともかく天才天才言ってる広瀬すず、何が天才なのかさっぱりわからないのだが、なんか不思議なカンフー・ダンスを踊ると、写真記憶のようにその前後のことが鮮明に脳裏に浮かび上がるという特殊能力があるらしい。なぜそんなことができるのかというと、彼女は天才科学者だった父親が開発した革新的ゲノム編集を施されて生まれたゲノム編集ベビーだったからなのである。えー、そんな人体実験を、しかも今から二十年も前に! 劇中では「世界の水準から10年は進んでいる」とか言ってるんだけどそんなレベルじゃないだろ! そんなノーベル賞級天才で生命倫理ゼロメートル地帯に住んでいる父は、その技術を狙う陰謀に巻き込まれて死亡、残された研究データはアンナがペンダントにしてこれみよがしにぶらさげているが、その秘密を狙って暗躍する者が……

 

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