柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『レット・イット・ビー ~怖いものは、やはり怖い』 大川隆法、最後の映画。ハッピーサイエンススターたちともう会えないのかもと思うと、ちょっと寂しい気も…

公式サイトより

レット・イット・ビー ~怖いものは、やはり怖い

監督 奥津貴之
原作・企画 大川隆法
撮影 新島克則
音楽 駿河優森
主題歌 田阪恵美
出演 青木涼、山岸芽生、長谷川奈央、松岡蓮、深沢莉子、神峯えり、千眼美子、宮本大誠、津山登志子、並樹史朗、ミスターちん、小宮孝泰

 

タイトルには著作権がない。ないのだが、それにしたってやっていいことと悪いこととあるだろ!と誰もが一言あるだろう『レット・イット・ビー』。大川総裁がビートルズ好きだった、くらいしかこんなタイトルをつける意味が思いつかないわけで。プロデューサー小島一郎は「本作のメインタイトル「レット・イット・ビー」は、サブタイトル「怖いものは、やはり怖い」と同義です」とか言ってるけど、そんなわけあるか! 大川総裁が2023年3月2日、自宅で急死したことではからずも大川総裁の関わった生前最後の映画となった本作、2021年公開の『夢判断、そして恐怖体験へ』の続編。よりによってこんな小品が最後になってしまうとは。幸福の科学の映画戦略が今後どうなるのかはわからないのだが、いつの間にか顔なじみになっていた長谷川奈央、希島凛といったハッピーサイエンススターたちともう会えないのかもと思うと、ちょっと寂しい気もする。なお、映画のテーマは「この世は短くはかないものだが、この世がすべてではない」ということらしいので、死後第一作でもまあいいのかもしれぬ。

 

 

さて、心理カウンセラー(兼前世リーディング師)神山圭治(青木涼)の助手として人助けをしている上野葵(山岸芽生)のもとには、今日もいろんな悪夢を見た患者が夢判断を求めて訪れる。映画では五つの「リーディング」が登場し、それを神山が解釈してゆくのだが、相互に関連はなくただの数珠つなぎになっている構成は、正直前作に劣ると言わざるを得ない。

 

〈血の雨が降る〉

血の雨が降る夢を見た大学生だが、起きると畳に夢の中の血が染みこんだ跡がある。超常現象を取りあげるテレビ局からリーディングの依頼を受けた神山、さっそくカルマのせいなのだと説明する。「前世の武将が人を殺しまくり血の雨を降らせていたせいなのです。前世で多くの人の可能性を奪ったので、今生では他人の可能性を生かしてあげる生き方をしなければなりません」と説教。懐疑派のアナウンサー青山千聖(長谷川奈央)は圧倒されながらも納得できないものを感じている。

 

〈稲荷神社の使い〉

ある日、神山のオフィスからの帰り道、葵は見知らぬ道に迷いこむ。四つ角のどちらを行っても同じ場所に出てしまうのだ(トリック撮影で右から画面の外に出ては左から入ってくる葵の姿)。誘われるように四つ角の稲荷神社に入っていく葵。するとどこからともなく老婆があらわれ、「四百円貸しとくれ」と言うではないか。だが、財布が空っぽだった葵、「すいません」と謝って帰る。後日、神山のリーディングにより、稲荷の狐が、葵を使い魔にしようとしていたのだと判明する。そこでお金を払ってしまうと稲荷に使われることになっていたのだという。

 

〈脚についた手形〉

千聖の同僚アナウンサー奈津貴(深沢莉子)、膝に血の色の手形があらわれる超常現象に見舞われる。神山のリーディングによると、それは奈津貴の前世にかかわることであった。隠れキリシタンであった奈津貴の前世は石抱きの拷問にかけられた。そのとき、彼の前にイエス・キリストがあらわれ、「あなたのかわりにわたしが重荷を持とう」と石の下に手を差し入れた。そのとき、血だらけのイエスの手形が前世の膝に残ったのである。それは彼女が前世と同じように神に身を捧げる人生を送ることを求めているのだ、と神山に諭され、奈津貴は教会に向かうのだった……ってどう見てもキリスト教会なんですけど、意外と心が広いじゃないかハッピーサイエンス!と思ったんだよこのときには。

 

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