柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『大阪カジノ』「大阪シリーズ第10弾!」って知らないよ! まるで誰も知らない映画を延々と見続けているのに一向に知名度のあがらない皆殺し映画通信!

→公式サイトより

 

大阪カジノ

監督・脚本・編集 石原貴洋
撮影 谷崎龍平
音楽 中森信福
出演 木原勝利、大宮将司、橘さり、海道力也、藍海斗、堀江祐未、パラゴンつよし、ひと:みちゃん

 

地方映画48都道府県リスト

 

 

「『大阪外道』、『大阪少女』……に続く大阪シリーズ第10弾!」って知らないよ! まるで誰も知らない映画を延々と見続けているのに一向に知名度のあがらない皆殺し映画通信みたいだよ! てなことはないわけですが、なんでも活動拠点を大阪に置き、裏社会やらバイオレンスやらを得意とする映画を作りつづけているという石原貴洋監督、映画産業の一極集中を憂えて、「47都道府県すべてに独立した個性的な映画監督がいるべき」という考えを持っているという。そうか群馬は……島根なら……と皆殺し映画通信の忠実な読者の方ならすぐに具体的な名前が浮かんでくるところだろう。少なくとも理念としては、評者としても大いに賛同できるところである。日本の津々浦々から映画を発信し、映画で日本を埋め尽くせ! さてそんな理念にしたがって大阪からやってきた映画が『大阪カジノ』だっていうのは笑えばいいのかどうなのか。正直、今カジノを推進してるような連中にはですね……

ところで驚いたことに本作はノンフィクションで、というか主人公には実在のモデルがいるのだという。これ実際にこんなことやってたとしたら相当ブラックでヤバいんじゃないのかと思われるわけなんですが、どうなんだ! いやさすがにこれは誇張に違いない。こんなひどい社長はいないよ。すべてがフィクションで、パワハラされた社員なんかいなかったんだ! ということになるといいなあ……

 

 

 

 

優秀な保険の営業マン杉本(木村勝利)は、心に秘めた野望があった。カジノ王に、俺はなる! 別にギャンブル中毒というわけでもない杉本がなぜそんな欲望に取り憑かれることになったのかは誰にもわからないままである。なんでもギャンブル好きは父親からの遺伝だそうで、まともな建設業者だった父親、どうしてもパチンコ屋をやりたいと仕事をうっちゃってパチンコ店経営に身を投じたが、慣れぬ仕事で赤字続き、パチンコ屋は倒産寸前に陥っている。普通こんなことになったら子供はギャンブルをやめてまっとうに働こうと思うものだろうが、なぜかそこでパチンコ屋を継ごうと考えはじめる杉本である。妻(橘さり)との共同預金を取り崩し、600万円のお金を作って倒産寸前のパチンコ屋に乗りこむのだが……

まずは店長の垣内(大宮将司)。かき集めた虎の子の金を種銭にジャンケンで勝負を挑む。負けたら200万円、そのかわり勝ったら一生を自分に預けろ。勝負では垣内が「何を出しますか? ぼくはグーを出しますけど」と頭脳戦で撹乱を狙ってくるが、同じ手でやりかえした杉本は無事勝利する。それからは連日パチンコ屋泊まりこみで働く二人である。それはいいのだが災難なのは最後に残っていた二人の社員である。金がないからとバイトも雇ってもらえず、週六日間一日十四時間労働を強いられていたのだ。「お願いですからどうかアルバイトを雇ってください」と杉本に願うが、杉本は「すまん」と頭を下げる。「もう一ヶ月だけ我慢してくれ。今月はどうしても借金の返済のために金が必要なんだ。来月には必ず……」

とひたすら頭を下げるだけ。実は金融機関や取引先を回って、父親が作った借金を待ってもらうときもひたすら頭を下げるだけなのだ。杉本、実はひたすら頭を下げることとブラック労働を強いることしか経営の秘訣がないのではなかろうか。そういうわけでブラック労働を強いられた従業員たち、翌月になってもまったく改善されないのでついに辞表を叩きつける。この辞表、一身上の都合も何も書いておらず、「お世話にはなりませんでした。あんたら、早く死んでくれませんか」みたいな呪詛だけを書き連ねた不幸の手紙みたいな代物。杉本に強いられたブラック労働のおかげで精神が歪んでしまった二人の従業員、このあと一切出てこないので、本当に……

一年後。

 

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