柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『逃走中 THE MOVIE』バラエティ番組をドラマにして劇場版とか、いったい何を考えているのかと思ったら、世にも安易な映画化脚色がまた一本

公式サイトより

逃走中 THE MOVIE

監督 西浦正記
脚本 青塚美穂
撮影 安藝孝仁
音楽 得田真裕
主題歌 JO1
出演 川西拓実、中島颯太、木全翔也、金城碧海、瀬口黎弥、佐藤大樹、田鍋梨々花、川原瑛都、松平健、ガチャピン、HIKAKIN

 

逃走中』はフジテレビで2004年にはじまったバラエティ番組、渋谷の街頭でタレントが鬼ごっこをして、最後まで逃げ切れば賞金がもらえるという仕掛け。追いかけるのはダークスーツにサングラスという「ハンター」、まあエージェント・スミスである。そんな具合にやってる追いかけごっこが二十周年ということで劇場版が登場。しかし、二十年続いたとは言えバラエティ番組である。それをドラマにして劇場版とか、いったい何を考えているのかと思ったら、やはり予想通りに最後まで捕まらずに逃げ延びれば大金ゲット!という『バトルランナー』みたいなデスゲーム映画になっていた! 世にも安易な映画化脚色がまた一本。

主人公は吉本興業と韓国CJが運営する男性アイドルグループJO1とFantastics from Exile tribeからのメンバー六人。彼らが必死で走って、合間合間にエモいシーンがあって友情を確かめたりイチャイチャしたりするという。なのでこれ、どんなにバカバカしい話であろうと、「推し」がワチャワチャしながら汗をかく場面が見たいという需要にはそれなりに応えており、その範囲内では観客の要望は満たしている映画なのだろう。ファンのお嬢様方はそれなりに満足して帰っていたように見受けられた。もちろん、そんなことはオレには関係ないけどな!

 

 

 

今を去ること三年前、都立高校の陸上部員だった六人組は、全員お揃いのミサンガをつけるなどして永遠の友情と絆を誓っていたのだが、最後の大会のリレーで惨敗し、バラバラになってしまったのだ。エースだったジョージ(佐藤大樹)が無断で欠席をかまし、補欠だった秀才のエイジロウ(中島楓太)がバトンを落として敗北したのである。さて、そんな中でも、名門大学の陸上部に進学したヤマト(川西拓実)と学生のくせにFXに手を出して900万円の穴をあけ(いや、普通にクズだろこいつ)、にっちもさっちもいかない状態になってるケン(木全翔也)は、テレビでやっている『逃走中』の番組を見て、「これだ!」と思いつく。

というわけで東京二十三区全域をフィールドにし、逃走時間は三時間、賞金総額一億円という太っ腹なゲームが開催されることになり、参加者はお祭り気分で集まってくる。スタート地点は新宿都庁前、お台場フジテレビ前など都内四ヶ所で、ルールがどうなっているのかさっぱりわからない(移動手段は限定されているのか、隠れるのは許されているのか等々)ので、ゲームとしての面白さはまったくないが、いずれにせよこれで三時間逃げるくらいは楽勝と思われる。ヤマトたちは都庁前スタート、お台場スタートのお調子者リク(瀬口黎弥)とエイジロウは、幼い弟を探す本郷マリ(田鍋梨々花)という少女と出会う。弟カイ(川原瑛都)はとある事件で心を閉ざして言葉を喋らなくなってしまったのだ。だからそんな子供連れて鬼ごっこに参加しようとするなよ! そして連れてきといてはぐれてるんじゃないよ! しかるにこのマリ、ステージが変わるたびに弟とはぐれて、「カイ~カイ~」と探しまわっているのだ。手を握っておくぐらいのこともできないとか、本当に×××

 

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