柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ザギンでシースー!?』 銀座四丁目交差点にある公衆電話のタイムマシンでタイムトラベル。ザギンのシースー屋は出てきません。じゃあなんなんだこのタイトル!

 

公式サイトより

ザギンでシースー!?

監督 金森正晃
脚本 赤松新
企画・プロデュース 松田和亜紀
撮影 白樫翔維
音楽 佐崎勇二
主題歌 華原朋美
出演 伊藤健太郎、暁月ななみ、岩城滉一、熊田曜子、あべこうじ、増本庄一郎、丘みどり、なだぎ武、チャド・マレーン、武藤十夢、呂布カルマ、鹿目凛、おぼん、泉ピン子

これはいったいなんなのか? 企画・プロデュースを務める松田和亜紀が原動力なのはまちがいないと思われるが、ソングライター、音楽プロデューサーとしての華麗な経歴のどこにこの銀座愛に満ちた銀座映画を作らせるものがあったのかさっぱりわからない。そもそも2022年にタイムトラベルSFを作ろうとする意味がわからない。遅ればせながらで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でも見て思いついたのか、銀座四丁目交差点にある公衆電話がタイムマシンで、特別なテレホンカードを使うタイムトラベルできるという設定。いまどきの人がテレホンカードなんか知ってるのか? てかテレホンカードってまだ現役なのか?? ひょっとして今は昭和ではないのか? そして昭和の電通マンとしか思えないタイトルにもかかわらず、ザギンのシースー屋は出てきません。じゃあなんなんだこのタイトル!

 

 

 

さて、銀座の片隅にある「喫茶でろりあん」で、常連客の祥平(伊藤健太郎)は同じく常連客の藤島(岩城滉一)をいかさまポーカーでカモっている。ついでに同じく常連客里奈(暁月ななみ)もすきあらば藤島の財布をすりとろうと虎視眈々。もともと祥平はこのビルのオーナーだった木戸家の息子だったのだが、母を早くに亡くしたのちにグレ、いかさま賭博であちこち出禁になり、最後にここに流れ着いたという経緯がある。て客層悪い喫茶店だな! いかさまでケツの毛までむしられた藤島、翌日、しかたないのでとっておきを……と言って出してきたのがテレホンカード。それも残り度数5度。

「いらないよそんなの」

「違うんだこのテレカは特別で……」と説明をはじめる藤島。

なんでもたまたま行倒れていたホームレスを救ってあげたら、そのホームレスが有名な核物理学者だかなんだかで、銀座四丁目交差点にある公衆電話ボックスの地下にあるワームホールを利用してタイムトラベルする方法を開発しており、それがこのテレホンカードなのだという。公衆電話ボックスがある時代には好きなように時間移動できるという恐るべきシステムだ。

「可哀想に負けがこんで変なこと言い出したんだね。もう気にしないでいいよどうせイカサマだから」

 まあそれは無理のない反応。見てる観客の方も帰りたくなるような話だし。だがそう言われた藤島が逆上するのはイカサマをやられたほうじゃなくてタイムトラベルを信じてもらえなかったほう。というわけでさっそく四丁目交差点までえっちらおっちら歩いてくると、前日にタイムトラベルして喫茶でろりあんでのやりとりを店の外から見せる。もう一度数使って現在に戻ってくると(これ使わなくてもまる一日どっかで待ってればいいんじゃない?と思ったが、馬鹿だから使ってしまうのだ。最初にホームレスからこのカードをもらってから、この調子でどれだけの度数のタイムトラベルを浪費してきたのかと考えると恐ろしいくらいだ)、ギャンブル狂の父親(あべこうじ)が頭を抱えている。実は30年前に小河(増本庄一郎)という男にポーカーで負けて作った500万円の借金が、利子が積もりに積もって12億円に! このままでは小河にビルを取られてしまう! というわけで三人組は勇躍30年前の銀座にタイムトラベルする。

 

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