柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『カーリングの神様』  カーリングの神様は、手に珠を握った龍のかたち…ってドラゴンボールのシェンロンじゃないか! そんな使いまわしみたいな神様でいいのか!

公式サイトより

カーリングの神様

監督 本木克英
脚本 谷本佳織
撮影 石黒康一
音楽 Akiyoshi Yasuda
出演 本田望結、長澤樹、泉智奈津、白倉碧空、川口ゆりな、秋山ゆずき、柄本明、六角精児、田中麗奈、高島礼子

 

長野県御代田町の「カーリングホールみよた」は本州最古の伝統あるカーリング場だ。そこを本拠地とするカーリングクラブ「みよステラ」でカーリングにいそしんでいた仲良し少女四人組の寄せ書きに、主人公の父が絵を描きこむ。これはなに?
「カーリングの神様だよ」

 

 

 

 

それは手に珠を握った龍のかたちをしており……ってドラゴンボールのシェンロンじゃないか! そんな使いまわしみたいな神様でいいのか! で、カーリングの神様に見守られていたはずのチーム「みよステラ」、小学生の大会で優勝したのが最後の栄光で、主人公の父親が早くになくなったうえ、エースがよりによって最大のライバルである軽井沢(御代田町は「金だけはある」軽井沢の西に位置し、知名度で圧倒的に劣っているためルサンチマンを抱いているのだという)の豪華リンクをホームにする「軽井沢EC」に移籍してしまう。裏切り行為に心が折れたチームは開店休業状態に陥ってしまうのだった。ちなみに主人公香澄(本田望結)の兄も「軽井沢EC」所属で、妹に「おまえも軽井沢に来ればいいのに」と誘っている。

数年後、高校卒業を目前にした香澄は、思い出づくりのためエキシビジョンマッチに出場しようと思いつく。実はカーリングのワールド・ツアーがここ御代田町からはじまるのを記念して、オープニングにかの名門チーム「ロコ・ソラーレ」がやってくる。その相手に「みよステラ」で立候補しようというのだ。でもチームは三人しかいないんだけどどうするの? 決まってるじゃない! というわけで香澄、軽井沢まで離脱した元チームメイト舞(川口ゆりな)にスポット参加をお願いしに行く。これ、舞がなぜチームメイトを捨てて軽井沢に移籍したのかはっきりとは語られないのだが、どうやら競技として個人能力を磨き上げるよりも楽しく友人関係を優先するチームメイトに愛想を尽かせたのも一因らしい。もしそうなら、思い出つくりでも一度やって!みたいな甘ったれたお願いにのっかるわけはないではないか。案の定、

「悪いけど、そのエキシビジョンマッチ、うち(軽井沢EC)が出るから、あんたらなんておよびじゃないよ!」

 とけんもほろろに断られる。あんたの手なんかかりないよ、こっちで出てやる! とはいえ、四人目はどうするの?

そこにあらわれたのがミノリである。シングルマザーの母(田中麗奈)に連れられて御代田町に引っ越してきたミノリ

「御代田町に来たんだからカーリングくらいやりなさいよ」と強引な母に命じられておずおずと「みよステラ」に加盟する。大喜びの香澄だが、カーリング初心者のミノリはまともにストーンを投げることもできない。すっかり諦めモードのチームメイトたち。

 さて、そんなことはつゆ知らぬミノリの母、養護施設で働くことになるが、わがままばかりの老人小宮山(柄本明)の世話にてんてこまい。来たよ柄本明! 例によって監督に放置されると無駄に大暴れする名優だが、今回はベッドに縛りつけられているため意味不明に怒鳴り散らす程度。それでも出てくると安心の無茶振りで

「ロールケーキの切り口が汚いじゃないか! ロールケーキの断面はきれいに模様が見えないとならん!」

 とロールケーキ奉行ぶりを発揮して全員を困惑させたりして最高すぎた。

 

 

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