ドキュメント「7・22 高江N1ゲート前」 怒号と悲鳴の中、政府は民意を踏みにじり、ヘリパッド工事を強行した 沖縄・高江より緊急レポート 2
■参院選の「民意」を無視し、ヘリパッド工事を着工する政府
国はついに高江(沖縄県東村)のヘリパッド工事を強行した。
多くの反対派市民の抵抗は、各地から派遣された機動隊によって蹴散らされた。
この日、国は辺野古の新基地建設を巡っても、県が是正指示に応じないのは違法だとして、翁長雄志知事を相手とする違法確認訴訟を福岡高裁に起こした。
政府はやりたい放題だ。力で押さえつければ、沖縄はなんとかなるとでも思っているのであろう。
前日から沖縄入りした私は、同日の夜11時ごろ、ふたたび高江に向かった。
(編集部註:前日の様子は『辺野古だけじゃない! 今、高江で何が起こっているのか? 沖縄・高江より緊急レポート1』をご覧ください)
県道70号線に面した通称「N1ゲート」前。「Xデー」を迎え、すでに200人を超える人々が夜を徹しての警戒に当たっていた。
普段は深夜にもなると人の気をまったく感じさせることのない静かな場所だ。街灯がないので、頼りとなるのは月明りと懐中電灯だけだった。見上げれば満天の星が輝いている。
近くにはコンビニなどの商店も皆無だ。そのため、飲料品や菓子パン、おにぎりなどの差し入れが続々と到着する。
「マスコミの人も遠慮しないで食べてください」
差し出された菓子パンをひとつ、私もいただいた。それから十数時間、飲料品以外のものを口にすることができなくなるとは、私も想像していなかった。
一帯を支配していたのは夏の夜の高揚感ではなく、ひりひりするような緊張感だった。
近隣にはすでに機動隊の大型車両(通称、カマボコ)が終結していることが、集まった人々には伝わっている。
「隣の村にカマボコ3台」
「ダムの敷地内にカマボコ1台」
偵察役の地元住民からひっきりなしに情報が寄せられる。
もちろん、偵察しているのは反対派ばかりではない。少数の機動隊員や防衛局職員らは、「N1ゲート」前で監視を続け、集まった車両の数などを無線で報告していた。警察車両もひっきりなしに往復する。
県道の高江地区部分に検問が敷かれ、現場が事実上の”封鎖状態”に置かれたのは午前2時過ぎだった。応援に駆け付けた市民もその場で警察に追い返され、現場に入ることはできなくなった。このときからゲート前を中心とした県道の南北約700メートルの区間で、反対派は隔離状態にあったわけだ。
午前3時。反対派の”顔”として知られる山城博治氏(沖縄平和運動センター議長)を中心に路上で対策ミーティングがおこなわれた。
「明け方には機動隊が押し寄せてくるだろう」
山城氏はそう前置いて、それぞれが非暴力で機動隊を押し返すことを確認した。
このとき、市民らの自家用車約170台が路肩に駐車されていた(一帯は駐停車禁止区域ではない)。機動隊の大型車両の進入を防ぐため、区間の南北両端で自家用車を道路中央に寄せて「ハの字型」に停めた。
「これでカマボコも入ってこられない。レッカー車を用いても車を移動させるだけで相当な時間がかかる。少なくとも今日は持ちこたえることができるのではないか」
そんな声を聞くこともできた。
午前4時過ぎ。「機動隊が近づいてます!」県道南端で見張りをしていた女性が大声をあげる。慌てて駆け付けてみれば、赤色灯を回転させた大型車両が数台、停車していた。
市民らは腕組みをして車両の行く手を阻む。座り込む者もいた。
しばらくの間、機動隊に動きはなかった。両者が睨みあった状態のまま、約2時間が過ぎる。
■午前6時、機動隊が市民に襲いかかった
午前6時。
「機動隊に突破された!」。今度は北端から声が響いた。車両から降り立った機動隊員が、そのままなだれこんできたのだ。その数、およそ500人。地元の沖縄県警をはじめ、警視庁、大阪府警、愛知、神奈川、千葉など各県警による混成部隊だ。
いっせいに市民に襲いかかる。
各所で怒声や悲鳴が響いた。
「やめろ!」「乱暴するな!」。
機動隊は容赦なかった。座り込む市民の両手両足をつかみ、ひとりひとりを”ごぼう抜き”していく。羽交い絞めにされたり、地面に組み伏せられる者も少なくなかった。
首を抱えられ、引きずられるようにして座り込みから排除された女性は「なんでこんなに乱暴なの?」と泣きながら抗議したが、若い機動隊員は一切、口を開かない。まるで工場で仕分け作業でもしているかのように、黙々と任務を果たしていた。
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