新経営者決定! 絶望から希望へ 新生「シャンティ」の第一歩がスタート
安堵の表情を見せる「シャンティ労組」ジョシ委員長
■インド独立記念日の8月15日、事態は動いた
新生「シャンティ」が動き出した。
来月には再び、多くの人に親しまれた「シャンティ」のカレーを味わうことができそうだ。
賃金不払いを続けた社長が雲隠れした挙句、会社は破産、放り出されたインド人、バングラデシュ人の従業員たちが労働組合を結成して倒産争議を闘ってきたことは既報の通りだ(下記参照)。
「賃金も2年払われていません。助けて下さい」 日本人に食い物にされる外国人従業員<前篇>
「賃金も2年払われていません。助けて下さい」 日本人に食い物にされる外国人従業員<後篇>
未払いの賃金は総額1億円に達するものの、会社資産はゼロに等しく、従業員たちは閉鎖された店舗に寝泊まりしながら、不安と絶望の日々を過ごしてきた。店舗の家主からも立ち退きを迫られ、もはや八方ふさがりの感も強かった。
ところが、8月に入って事態が急展開を見せる。
従業員の雇用と店舗経営を引き継ぎたいと申し出る事業家の登場で、新たな道が開けたのだ。
8月15日、新経営者のもとで第1回目の経営会議が「シャンティ」大塚店(東京・豊島区)で開かれた。
奇しくもこの日はインドの独立記念日でもあった。
不安は期待に変わるか。絶望は希望へとつながるか。
紆余曲折を経て、「シャンティ」はいま、第2の創業にまで漕ぎついた。
■絶望と、落胆と、溜息と
「シャンティ」での労働争議が報じられて以降、実はこれまで、少なくない人が「経営引き継ぎ」を打診してきた。
同業者はもちろんのこと、老舗の洋菓子店、質店経営者などが名乗りを挙げたが、いずれもぎりぎりのところで話はまとまらなかった。
ある大手のカレーチェーン店に勤務経験のある男性は「シャンティ」を”視察”に訪れた際、私に次のように述べている。
「各店舗の立地も悪くない。いずれも駅に近く、住宅地にも近接している。しかも味も悪くなかったのだから、十分に採算が見込める条件はそろっている」
そのうえで「経営引き継ぎ」に意欲を見せたものの、しかし、最終的には従業員との合意には至らなかった。
従業員側はあくまでも、希望者全員の雇用、労働基準法順守の経営姿勢、労働環境の整備にこだわった。
当然である。前社長には裏切られ続けてきたのだ。長期にわたる賃金の未払い、不払いがありながらも「いずれ支払う」といった前社長の言葉を信じた。社会保険の未加入も当然だと思わされてきた。働く場所があるだけ幸せなのだと思わされ続けてきた。多くの外国人労働者がそうであるように、不安や不満を訴える回路も持たず、支配と服従の関係を強いられてきたのだ。
店舗が閉鎖されて以降、従業員の間からは弱音が飛び出すことも珍しくなくなった。
「国に帰ったほうがいいかもしれない」
「ここにいても無駄なんじゃないか」
溜息と一緒に漏れる言葉に、私も溜息で応えるしかなかった。
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