「ノンフィクションの筆圧」安田浩一ウェブマガジン

「その先の右」へと走る自民党~「右に傾けばカッコいいと思っている議員が少なくない」 元重鎮たちの危惧の声は果たして届くか 

日本会議系団体による改憲派集会へ寄せた安倍首相の「改憲宣言」

 5月3日、憲法施行から70年目の節目を迎えた。
 護憲、改憲のそれぞれの立場から、今日も各地で憲法を考える集会がおこなわれた。
 東京・千代田区の砂防会館では「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などが主催する改憲派集会が開催された。
 ちなみに同会の共同代表は櫻井よしこ(ジャーナリスト)、田久保忠衛(杏林大学名誉教授)、三好達(日本会議名誉会長、元最高裁判所長官)の3氏。さらに幹事長には百地章(日本大学法学部教授)氏、事務局長は椛島有三(日本会議事務総長)氏といった名前を見ることができる。いうまでもない、日本会議系列の団体だ。
 1千人を超える参加者のもと、注目を集めたのは安倍晋三首相が集会に寄せたビデオメッセージだった。
「憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是です」
 そう切り出した首相は2020年の東京五輪を持ち出し、次のように訴えた。
「新しく生まれ変わった日本が、しっかりと動き出す年、2020年を、新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っています。私は、こうした形で国の未来を切り拓いていきたいと考えています。
 本日は、自由民主党総裁として、憲法改正に向けた基本的な考え方を述べました。これを契機に、国民的な議論が深まっていくことを切に願います。自由民主党としても、その歴史的使命を、しっかりと果たしていく決意であることを改めて申し上げます。
 憲法改正に向けて、ともに頑張りましょう」
 東京五輪の年に改正憲法を施行するのだと、その道筋をはっきりと示したのであった。
 これに気を良くしたのか、登壇者たちも勢いづいた。
 「安倍さんのスピーチは心に響いた。勇気づけられる」(櫻井よしこ氏)
 「(総理は)初めてあそこまで言及した。当然のことを言える環境になりつつある」(自民党衆院議員・古屋圭司氏)
 「首相は何歩も先に踏み込んでくれた。憲法改正の機は熟した」(日本維新の会衆院議員・足立康史氏)
 早くも改憲が決まったかのような雰囲気の中、「改憲集会に初めて呼ばれた」という公明党衆院議員の遠山清彦氏までもが「憲法も施行から70年が経過した。時代に合わせて変えていくべき」と改憲勢力にすり寄る始末。
 櫻井氏などから「(創価学会の)婦人部などを説得できるのか?」と疑問がぶつけられる場面もあったが、「安保法制でも最後には納得してもらえた」と説得に自信があることをアピールした。
 集会の最後には、「各党は具体的な憲法改正原案の提案を!」と題した声明文が決議された。
 「国民の命と暮らしを守る国家の責任を果たすため、各党に対して、憲法改正原案を提示して国会における合意形成を図り、憲法改正の国会発議および国民投票の実施をすみやかに実現するよう要望する」
 もはや改正か否か、といった議論をする余地さえないように感じ取れる。何を変えるべきなのか、どう変えるべきなのか、それを議論すべきだと主張しているのだ。
 おそらく「安倍1強」の自信の表れであろう。

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