佐渡金山は世界遺産にふさわしいのか(3)
■世界遺産登録をめぐる最大の障壁
「佐渡金山の世界遺産登録、大賛成ですよ」
熱い口調で訴えるのは小杉邦男さん(84歳)だった。小杉さんは長きにわたって佐渡市議を務め、議員を退いたいまも地元のまちづくりをはじめ、様々な市民運動に関わっている。
ただし──と小杉さんは続けた。
「世界遺産の本来の目的にかなった形であることが条件です。理念を無視した“登録ありき“の議論には与しません。目的のために逆立ちするなんてこと、賛同できるわけがない」
加盟各国が締結する「世界遺産条約」では、「文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存するための国際的な協力及び援助の体制を確立すること」が目的であると定めている。
文化や自然を人類共通の財産として未来へつなぐ。そこに独断専行があっては、本来の目的を逸脱することになる。つまり「逆立ち」は許されないというわけだ。
小杉さんがもっとも危惧するのは、そこだ。
「近代遺産をオミット(除外)して江戸時代の技術に限定してみたり、強制連行、強制労働の歴史を無視したり。それでは世界遺産としての価値がなくなってしまう。目的が独り歩きするのはおかしい。やはり、戦時の政策の誤りも含めて明記し、人類共通の財産とすべきです」
小杉邦男さん(元佐渡市議会議員)
その点に関しては私たちも同じ気持ちだった。今回の取材をもとに放映した「#NoHateTV」Vol.159でも野間易通が次のように“解説“している。
「番組の性格上、これまで僕らも極右政権の思惑といった形で世界遺産問題を取り上げることが多かった。この問題に『歴史戦』なる言葉が出てくるたびに、冷笑して突き放していたと思う。だが、世界遺産そのものは冷笑すべき対象ではないし、ましてや地元・佐渡の人々の思いはじゅうぶんに理解できる。結局、世界遺産を、まるで韓国や中国に対抗するためだけに利用している勢力こそが問題。これは地元の思いを踏みつけていることになるのではないか」
そうなのだ。世界遺産を道具に隣国への敵対心を煽る薄汚い魂胆こそが、登録に際しての最大の障壁である。
「#NoHateTV」Vol.159で佐渡金山の世界遺産推薦問題について話す野間易通(左)
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