11月1日、見竹をチームキャプテンに。Wキャプテンにしたことが福大大濠優勝に至る最後の1ピースだった。ウインターカップストーリー
見竹 怜(福岡大附大濠7・3年・187 ㎝・F・群馬県太田市立藪塚本町中)

PHOTO Yukie Yamamoto
今年度の高校界の最終決戦となったウインターカップ。レベルが高かった。福岡大附大濠が目指している「カッコよさ」の裏には、当たり前だけどカッコいい部分だけではなく、日頃の練習から積み重ねたもの。技術面は当然のこと、特に精神面、チームメイトとのコミュニケーション(プレイだけではなく、日常生活)の取りかた…きっと日本全国の高校生がぶつかるであろう悩みに真摯に向き合ってきたことが、地元福岡インターハイベスト4からの成長にあったように思います。 試合の流れが悪い時にディフェンダー見竹が投入されると忘れかけていたディフェンスの強度が強まり、みずからのペースにつながる。さらに下級生の4勝又絆の身体をはったリバウンド、ルーズボールに頭からダイブする泥臭いプレイ、下級生ながらゲームコントロールにかかせない10榎木璃旺に今年の強さをみました。 オフェンス面ではゲームキャプテンでありスリーポインター13湧川裕斗の決定力、日本代表にも選出されている渡邉伶音のインサイドのみならずスリーまで内外角こなすプレイ、地道に自分の仕事をこなす14高田将吾と輝かしい光を放つ選手たちにフューチャーしがちですが、優勝の二文字にたどりつくにはそれだけでは勝てません。 あえて、記者会見のコメントではなく、その直後に単独インタビューできたチームキャプテン見竹に表向きのコメントてはなく、ストレートな質問をぶつけてみました。 BB 今だから言えるけど正直言って、私はインターハイのコメントで一番の衝撃は美濃加茂戦後の伶音のコメントでした。 それは何かというと、 「同じ中学だった7関とは仲良く、美濃加茂のキャプテン(4藤田とWキャプテン)としてチームをまとめて自分でやることはやっていて、チーム力で少し差があったかな」と、チーム力の差を感じていた、こと。 素直に正直に感じたことを言ってくれたと思うけど、「チーム力の少しの差」がどれほどだったのか、を推し量ってしまいました。

PHOTO Yukie Yamamoto 存在感を示した渡邉怜音
今回のウインターカップの勝因をみんなチーム一丸となって、と口にしているけど、インターハイではみんながそれぞれ向いている方向がバラバラだった気がします。 〝チーム一丸〟ってそんな簡単にできるものではないですよね。ましてや、夏にそんな状態では。そのベクトルの向きを変えたのはどうやって、誰が尽力したんだろうということを知りたい。 ーーーー 美濃加茂戦の時は試合に出ている5人6人ぐらいで勝利に向かっている。方向性がバラバラというよりは、勝利に向かっていく人がそこまでいなかった。 なのでその美濃加茂戦が終わったあとに、苦しい場面に陥ってもしっかりと目を合わせることを目指してきました。自分たちのことを、自分たちでコミュニケ―ションを取ることをこの1年課題としてきたので、美濃加茂戦に負けてからより一層その気持ちが全員強くなりました。 〝三冠〟が自分たちの目標であるととらえられたんですけど、日清トッフ゜リーグ、ウインターカップと二冠を取るぞと強い気持ちを持って練習に取り組んできました。誰がというと、主に(湧川)裕斗、がいて、それに自分、(高田)将吾、(渡邉)伶音がついて行って回りに影響力を持てるようにしようと言っていたんです。 特に誰かが頑張ったというわけではなくて、チーム全員で。応援席にいたチームメイトを含めて全員で勝利を求めてきたのが、チーム一丸となった秘訣だったんじゃないかな。 BB ぶつかりあったことはない? そう簡単にはいかないでしょう。 ーーーー ままま、そうなんですけど。正直、自分が伶音や裕斗に意見を言うということは、自分はそこまで(の選手ではなく)シックスマンとしてベンチから出るという立場だったので、言いにくかったこともあります。 そこで、11月にゲームキャプテンになってから言いやすくなりました。といいますか、チームのためにいわなきゃいけないと自分の気持ちも強くなった。言い争いというか、お互いのことを尊重しているからこそ、お互い言われたことに対しても言い方には気をつけました。俺はこう思ったけど、伶音はどう思った? とか、お互いのことを思っているからこそいいあえた、ことがあってそこまでいい争いにはなりませんでしたね。 BB 紳士なのね。みんな頭いいから、遠回しに遠回しに言ってたんだろうね。いきなり言われたらかちーんとくるもんね。 その11月にもう一人ゲームキャプテンを決めるって、異例じゃない?

PHOTO Yukie Yamamoto おそらく湧川がWキャプテンになって肩の荷を少しおろせただろう
ーーーー 11月3日にウインターカップ福岡県予選決勝があって、その前の週ぐらいから練習の雰囲気が良くなくて、 「これで(福岡)第一に勝てるのか」、と喝を入れられたりしていました。 そこで、山本草大Aコーチから提案があって、 「裕斗がゲームキャプテン、自分がチームキャプテンとダブルキャプテンとしてやるのはどう?」 と聞かれました。自分もそれのほうがやりやすいです、と答え裕斗も入って3人で話して、次の日から自分がチームキャプテンになった感じでした。 本当に、チームの雰囲気が良かったらそうならなかったかもしれません。逆に悪かったからこそ自分がゲームキャプテンになってキャプテンとしていい思いができたので、山本先生には感謝しています。 BB 草大らしいな。広島大でも主将兼コーチとして本領発揮していたけれど。1年間で18キロ増えたAコーチだっけ(笑) 優勝記者会見で、見竹君がさらっと「11月からチームキャプテンになって…」と言ったから、あれ? と。聞いてないなぁ。テータを見たらやはり2人にキャプテンマークがついていた。これがきっと今回の鍵を握っているのではとピンときました。 片峯聡太コーチも今大会序盤に話しかけられた時に、なんか余裕を感じられた。もし何かが足りなかったり、チームに不安な部分があったら、あんな表情はしてないよねとライターの小永吉陽子さんと話していた。 きっとそこが優勝へのラストピースで、ターニングポイントだったんですね。 ーーーー 自分もそこから意識が変わったと思っています。

PHOTO Yukie Yamamoto 高田も、らしさを取り戻した
BB 今日、決勝でも一番危ない時間帯の時に、相手のスローイン。見竹君がディフェンスをしていて、パッと振り返って 「ディフェンスここから!」と叫んだ。 あの一言で、福大大濠みんなが全員ハッ! と気が付いた。と見受けられた。ああいうことだよね。 そんなにしょっちゅう声を出すわけではないけど、ここかゲームの肝となる大事な時間帯の時に声を出す。 ーーーー はい。そこまでベンチで喜んだり、感情を出すことは自分はないので。とにかく、常に冷静にいることがチームキャプテンとしての仕事だと思っています。 短い時間ですけど、練習の時に常にここディフェンスという時に声をかけようと、チームキャプテンになってから2か月間心がけてやっていたことなので。 BB あと、伶音が代表合宿から帰ってきて、片峯コーチに泣かされたでしょ。 ーーーー はい。怜音の気持ちは全部わかるといったらいいすぎかもしれませんし、嘘になるかもしれませんが。伶音的にもうまくいかないことがあって、先生に「自信(自覚?)を持ってやれ」と言われました。 自分たちもそのあと、声がけとかコミュニケーションを取りましたし、それで伶音もより一層強くなって人間性も上がったと思います。 BB 弱いのかな、と思いました。 ーーーー 片峯先生は、愛のムチというか… BB あんな顔してても実際怖いからね(笑) ーーーー 怖いですけど、愛がこもってますので。

PHOTO Yukie Yamamoto 新チームの中核となる4勝又(右)と10植木(左)