限界突パ

【ホークス論】「デスパイネは代打がメイン。2023年のホークスの戦い方が見えてきた」。

キャンプ地に現れた藤本監督のバルーン。就任2年目は王者に返り咲くことはできるのか。

番記者トーク。今回のゲストはソフトバンクホークスの取材をして22年目になるスポーツライターの田尻耕太郎氏。パ・リーグの首位争いを演じるソフトバンクの強さがどこにあるのかを深掘りした。開幕前のキャンプの想定から現在までチームはどう移り変わったのか。想定外なこと、想定以上に進んでいることをテーマに伺った。(取材・文 氏原英明)

――今、ソフトバンクはパ・リーグの首位争いをしています。いい位置にいると思うですけど、田尻さんは現状をどう見ていますか。 

田尻 交流戦の後半2カードぐらいから、潮目が変わったように感じています。それまであまり雰囲気よくなかったですよね。苦しんでるなーって見ていたですけど、神宮甲子園の2カードあたりからちょっと勢い乗り始めました。

 ――それまでは何がうまくいってなかったですか?

田尻 試合運びですね。もともとソフトバンク先行逃げ切りで勝つようなチームなんですけど先行逃げ切りもいいですけど、勢いつくの終盤に逆転したり劇的な勝ち方だと思うです。そういう試合がいくつか欲しいですよね。

交流戦の中でも、広島カープとやった試合とか、巨人の試合8 9回など試合終盤に追い上げですけど、結局あと一歩届かず負ける。何かが足りない試合がいくつか続いてたんです。それが巨人戦の次のカードヤクルト戦抜きつ抜かれつのシーソーゲームを制した。甲子園の阪神戦2試合目では9回1点ビハインド、2アウト2ストライクまで追い込まれたところから、中村晃選手が逆転タイムリー。それまでこんな試合なかったなっていうのが続い

 ――それが交流戦からも勢いとして残った。

田尻 4日間ほど試合空いたでどうかなとましたけど、リーグ再開初戦でオリックスの山本由伸選手を攻略勝ち方がプラスされてきて、今までの先行逃げ切りから勝ち方がひとつじゃなくなっ出てきました

 ――打線に関しては今季から近藤健介加入しましたが、そのあたりはどうですか?

 田尻 近藤選手交流戦入るまでは打率2割3分台だったで、どうしただろうと思ってましたけど、今すごく調子いい。「ミスショットが減った」と言ってました。どうしても考えすぎるタイプみたいですね。昨年までの近藤選手を近くで取材したわけじゃないので、どんな人なんだろうみたい感じで見てましたけどすごい真面目。逆にその真面目さでドツボにハマると、不調が長引いちゃってたのかな。

 ――どのボールを打つかの選び方がうまいですよね。絶対そこを打ってもヒットにならないだろうってところは手を出さない。

 田尻 そうですね。広角に打つイメージもあるですけど、確かに流し打ちも上手です、引っ張ってしっかり自分の形に持っていったときにものすごい成績残す。自分の形に持っていく上手さみたいなのを感じますよね。

 ――一方心配なのは左打者が多い。そのあたりはどうだったですか

 田尻 偏重みたいなことは言われてで右の強打者を当てはめようとしてたんですよ。開幕戦では正木智也を起用しましたし、外国人選手も獲得しました。今年の想定内と想定以上いうテーマで言うと、想定外最初に思いついたのは外国人。ふと4、5ヶ月前を振り返るとホーキンスが4番候補って藤本監督言ってましたからホーキンスどこ行っただろう?って・・・。気づけば、デスパイネが帰ってきた

 ――デスパイネとグラシアルとの契約を切ったわけだから、それ以上の活躍を見込んでたんしょうね。

 田尻 藤本監督が思い描いた2023年型っていうのは、外国人選手がハマれば2番近藤、3番柳田悠岐、4番外国人が理想だった。これちょっと無理になって1番バッターも苦しみました。今は中村晃がいい働きしてますけど、6、7番に置きたかったですよ。本来、期待していた、三森大貴、周東右京の当ても外れてしまっただから想定外だらけなんですよ。

 ――1番バッター中村にして変わり始めたってことですか。

田尻 想定以上の部分はそこですね。これだけ実績のある選手に想定以上というのはちょっと失礼ですけど、今年1月の段階ではレギュラー取れないじゃないかとも言われていました。近藤選手と同じタイプですし、同時に出場するのは考えづらいという見方もありました。本人もわかって来年までの複数年契約あるですけど、今年で終わるぐらいの覚悟で望んでいたみたいです。

 ――本当、代打職人になってしまうのかなぐらいの感じがありましたよね。

田尻 それも面白いぐらい僕も思っていました。長谷川勇也(現ソフトバンクコーチ)代打だったときにのようにハマるじゃないなと。でも、本人はさらさらそんなつもりはなかった。

 ――若い選手では頑張ってますよね? 

田尻 彼がもしかしたら中村以上に、近藤の加入でどうなるだろう?と感じていたと思います実際、開幕1軍入ったけど、早々に登録抹消になりました。編成上の理由だったので藤本監督も申し訳ないと言ってましたけど、それぐらいの立ち位置だったもともと闘志をむき出しするタイプじゃないですけど、ところが、なかなか真の強い男、その中で這い上がってきて

 ――一方、ピッチャーのほうなんですけど、田尻さんは後ろ重要性を説かれていますね

 田尻 オスナはすごいなって思いますねが入ってきた時点で、8回、9回を任せられるのだったらホークスは強くなるじゃないかと思いました。想定以上ですし、モイネロと2人率が0点台メジャーのセーブなんで、これくらいやっても不思議じゃないですが、ただの投げ屋じゃなくてクレバーなんです。ガンガン三振取りにいくイメージ持ってですけど、意外と打たせて取る。頭使うピッチングするです。見た目いかついですけど、ナイスガイですよ。日本の選手たちにもフォームのことやトレーニングのアドバイスをしています。

※モイネロは7月8日に抹消

 ――先発陣はどうですか?想定内とあると思うですけど。

田尻 千賀滉大(メッツ)がいなくなって、柱っていう絶対的なものがなかなか見えないですけど序盤エース級の活躍したのは和田毅でした。42歳の和田投手がこれはエースだなっていうぐらい。イニングは5、6回ぐらいで降りちゃいますけど、安心感がありました序盤がすごく落ち着くですよね。和田離脱してますけど藤井皓哉先発に転向していい結果残していました。2人が引っ張るところじゃなくなったところで、今は有原航平がいいピッチングをしていますね

 ――有原は見違えましたね。

田尻 僕は最初からいいってずっと言っていたです投げ方、フォームが好きなんですよね。フォーム通りにちゃんとボールが操れてるから、コントロール絶対間違いない。特に横幅が間違ないですよね。

 ――こんなコントロールよくなかったですよね

田尻 キャンプで見たときに、コントロールいいなっていうのを確信しました。というのはラインが見えですよ。ピッチャーは、結局、何かミスったときに手先で操作しちゃいがちなんですけど、有原はそれをしない

 ――コントロールが良くなりましたよね。ヤンキースに行った直後の田中将大の印象がします。すごい丁寧に投げるようになったと思って。

田尻 ほんと丁寧。日本ハム時代どうだったーっていうのは思い出せないですけど、入団会見とき、思ったより大きくて若いときは「エイヤーで投げて通用した部分もあったと思う。怪我したり苦労を経験して変わっていったのかなと。防御0点台ずっと続くかというとなかなか難しいと思うですけど、後半は柱として、やってくれるとデカいですよね

 ――先日の西武との3連戦を見て思ったのは、余計なミスをしない。王者らしいというのは感じました。最低限やっちゃいけないことをしっかりわかっている。

 田尻 今年どうこうというよりは、小久保裕紀二軍監督がキャプテンだった頃にもそういうのを言ってましたし、やっぱり勝ってた時の選手が残ってのは大きいですね。柳田や中村など中心の部分にそういう選手がまだいる、これから次の世代にちゃん受け継がれていってほしいなって思います。そのあたりは小久保二軍監督がそういうところをしっかり見てくれてると思うですけど、でも二軍戦に行ったら甘いところはいっぱいありますよ

 ――では最後に、優勝へのキーマンやポイントどこだと思いますか。

 田尻 デスパイネですかね。なんとなく2023年型は見えてきたので、今から新しい戦い方をするというよりは見えてきたこの戦いをどこまで続けていけるかだと思います。デスパイネが入ってきてプラスもあると思います。ただ柳田、近藤栗原、中村晃もそうですけど、DHを使いながら、うまくコンディションを整えていくいうのが今年のークスのやり方だった、デスパイネは代打に置いておく。そういう方針もあるみたいですね左だったり、ここという時にスタメンで使うけど、ずっとスタメンで出ずっぱりってことはあんま考えてない。基本線は代打そこは欲に負けないように。打てば使いたくなると思いますからね。

 ――デスパイネを使いすぎると全員が疲れちゃいますもんね

田尻 先日の試合でデスパイネが出場した日は、柳田が打ちましたけど、後ろにデスパイネがいるとマークも甘くなったりする。簡単に歩かせられないから、コースが甘くな。それをしっかり仕留める好循環も生まれるすけど、そこは上手見極めながら、頭使ってシミュレーションして欲しいですよねやっと2023年のホークスはこんな感じで戦っていくだなっていうのは60試合過ぎたぐらいから見えてきた

 ー兆しは明るいですね。

田尻 王者っぽくなってきました。想定通りやったら勝ちますからね。想定外言い出したら本当に元も子もないですけどでも想定外がこうやっていっぱいあるけど、今は首位争いをしている位置にいるということなんですよ。今年のホークスはダメだって書いたところで、首位を狙えるところにはいる。戦い方が見えてきているので継続していけるかでしょうね。

田尻耕太郎(たじり・こうたろう)
1978年生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。ニュースレター「田尻耕太郎の鷹バン」をはじめ、「Number web」「文春野球」「Yahoo!ニュース個人」などに寄稿。デイリースポーツ新聞社特約記者でソフトバンク担当も。また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手も参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手、千賀投手が顔を揃えた。

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